2024年11月23日( 土 )

病院をなくすことが患者の意識改革につながる 医者の価値観を患者に押し付けてはならない(前)

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東京有明医療大学 保健医療学部鍼灸学科 教授 川島  朗 氏

 数々の著作を発表する傍ら、テレビのコメンテーターとしても活躍する川嶋朗医師。西洋医学と東洋医学に精通し、ホメオパシーを取り入れた自然医療を実践するなど、日本の医科大学で初めて統合医療を実践する、統合医療の先駆者だ。

川嶋医師は、補完・代替医療(complementary and alternative medicine:CAM)を理解してもらうには患者のリテラシーも大事だが、それ以上に医療従事者の意識改革が必要だと指摘する。川嶋医師に、超高齢社会における医療のあり方、医療を選択する患者サイドの問題点などを語ってもらった。

 ―これからの医療は病気にならないことを中心に考えるべきですが、その意味においてCAMは予防医療の分野においても重要な役割を担うのではないでしょうか。

 川嶋 今の日本は、社会保障費と税収がほぼ拮抗しており、医療費や介護費の負担増が国を滅ぼしかねない状況となっています。国民皆保険制度がない米国では、病気になると高額の医療費を自己負担せざるを得ないこともあり、予防医学に重点が置かれるようになってきました。そして、完治できない慢性疾患には、西洋医学に代わるものとしてCAMが注目されているのです。

 日本人は依存心が強く、人任せで、悪くなったら病院に行こうという感覚がしみついている。これが根本的な大きな問題だと考えています。運動が良いことはわかっていてもやらない。体調が悪くなって医者にいくとクスリが出る。それで何とかなると思い込んでいる人が少なくありません。日本人の健康、病気に対するスタンスというものが、結果的に今の医療費の増大を招いているのです。

もちろん日本の医療保険制度は世界的にみても非常に良いシステムであることは間違いありません。しかし、受診者の自己負担が3割ということは、残りの7割は他人のお金に頼っていることになります。ですから病院にかかる前に、7割も負担してもらって良いのだろうか、という思いに至るべきなのです。

 体調が悪いからと言ってすぐに病院に行きたがるのも問題ですが、健診などで異常値が見つかっても行動を起こさない人が多いのも問題です。とくにサイレントキラーと呼ばれる生活習慣病などは、自覚症状がないために、生活を見直そうという意識が生まれません。これが命に関わる病気となると事情は変わってきます。がんになると「どんな運動をしたら良いのか」「どんな食事をとれば良いのか」と真剣に考えますが、命に関わらない病気だと自ら行動を起こそうという気にならないのです。

アメリカのように自己負担が大きい国では、病院にかかったらえらい目にあいますから、自然と予防行動をとるインセンティブが働きますが、日本は国民皆保険制度にあぐらをかいている状態なのです。メタボ健診が始まって10年が経ちますが、メタボ状態の人はほとんど減っていません。

(つづく)

<プロフィール>
川島  朗(かわしま・あきら)
東京有明医療大学保健医療学部鍼灸学科教授。東洋医学研究所付属クリニック自然医療部門医師。医学博士。北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学大学院医学研究科修了。

Harvard Medical School&Massachusetts General Hospital留学。東京女子医科大学腎臓病総合医療センター内科&血液浄化療法科講師、准教授、東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長を経て現職。日本内科学会認定総合内科専門医、日本腎臓学会学術評議員・認定指導医、日本透析医学会認定専門医、日本ホメオパシー医学会理事・認定専門医、日本東方医学会理事・学術委員、日本予防医学会理事、日本抗加齢医学会評議員、日本医工学治療学会評議員、国際生命情報科学会理事、NPO統合医療塾塾頭。

主な著作に「心もからだも『冷え』が万病のもと」(集英社新書)、「58歳からの人にはいえない体の悩み」(講談社)、「病気にならない体をつくるドライヤーお灸」(青山出版社)、「一生毒をためない生活」(永岡書店・文庫)、「『見えない力』で健康になる」(サンマーク出版)、「川嶋流がんにならない食べ方」(小学館101新書)、「代替医療で難病に挑む」(ペガサス)など。

(中)

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