2024年12月23日( 月 )

LIXILの瀬戸前CEOが、潮田現CEOの退陣を要求~MBOによるシンガポールへの本社移転を許さない!(後)

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MBOによるシンガポール移転をめぐり対立

 瀬戸氏は2016年、藤森義明氏(元日本GE会長)の後任として、創業家出身の潮田洋一郎氏に招かれた。潮田氏は2代続いて「プロ経営者」を経営トップに起用した。2人は、どんな経営方針をめぐって対立したのか。

 LIXILグループの首脳人事が不透明だと投資家が疑問視している問題で、第三者委員会が調査報告書をまとめた。簡略版を自社ホームページで公表したが、全文公開はしなかった。全文を入手した朝日新聞(4月6日付朝刊)は、対立のきっかけをこう報じた。

〈(瀬戸氏の)退任に至る潮田氏との直接の対立のきっかけは同(引用者注・昨年10月)19日の会食の席。本社を東京からシンガポールに移し、経営陣による自社株式の買い取り(MBO)を計画する潮田氏に、瀬戸氏が「やめた方が良い」反論。瀬戸氏は「潮田氏がCEOに復帰するなら辞めます」とも述べていた。〉

 今年1月、経済誌が「LIXILがMBOを検討、日本脱出も」と報じた。潮田氏が、MBO(経営陣が参加する買収)で、日本の株式市場から退出し、シンガポールに本社を移し、シンガポール取引所へ新規上場を計画しているという仰天するような内容だ。

 日本脱出計画で潮田氏は、社内、グループ企業、取引先の信用を失った。INAXの創業家出身の伊奈啓一郎氏が、瀬戸氏のCEO復帰を求め、トステムの創業家出身の潮田氏の解任に立ち上がったのは、社内外の「潮田ノー」の声に後押しされたからだ。

 瀬戸氏は5日の会見で、MBOやシンガポールへの本社移転計画には、「日本の事業が多いので移転はしない。MBOはあまり意味がない」とバッサリ切り捨てた。

 シンガポールに滞在し、月に1度程度しか帰国しない潮田氏の経営姿勢を問われると、「LIXILは日本のビジネスが7割。ちょっとありえない経営だという気がする」と痛烈に批判した。

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潮田氏が本社のシンガポール移転にこだわるワケ

 潮田氏はなぜ、日本脱出を計画したのか。税金問題が引き金になったという点で、関係者の見方は一致する。

 14年12月、トステム(現・LIXIL)創業家の脱税問題がメディアを賑わしたことがある。 トステムの創業者、潮田健次郎氏の長女・敦子氏が、父から相続した遺産をめぐり、国税局から申告漏れを指摘された。その額はなんと220億円。

 健次郎氏は、保有していた住生活グループ(当時)を売却して得た220億円を、潮田家の資産管理会社に移した。11年4月に健次郎氏が亡くなり、この資産管理会社の株式を長女が相続。長女は相続財産を資産管理会社の評価額にあたる85億円だと申告した。

  国税は、資産会社の価値を実際より低く申告したとみなした。国税局は、過少申告加算税を含めて60億円の追徴課税を命じる「更正処分」を下した。長女は、保有していた財産から60億円をキュッシュで支払ったという。

 芸術家のパトロンとして知られる敦子氏は文化事業に資金を投じるために、こうしたやりくりをしたのだが、国税は脱税と見なした。自らも粋人である洋一郎氏は、文化事業に理解がない日本政府に腹を立てた。「日本では納税をしないぞ」としてシンガポールへの本社移転を計画したのだという。こよなく風流を愛でる御曹司のご乱心というほかはない。

 日本脱出計画が、潮田洋一郎氏の命取りになりそうだ。約4割の持ち株比率の外国人株主の動向が帰趨を決める。

(了)
【森村 和男】

(前)

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