原発と住民の関係も変化 再エネ小売との協力構想も(中)
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自作のノボリで運動
こうした国と企業の動きに対して、住民たちも以前のように黙ってはいない。
そこに足を踏み入れると、ところ狭しと並ぶノボリの数に圧倒された。「健康無害を証明せよ」「四十年空気も水も汚染」……ほかにも多くの原発反対の標語が書かれている。
「ほとんど1人でつくったよ」と語るのは、唐津市在住の薬剤師・北川浩一氏。唐津の市民グループ「玄海原発反対!からつ事務所」の発起人の1人を務め、発足以来、自作のノボリをもって同市内の役場やオフサイトセンター(原発事故の際に発電所外での司令塔となる施設)の前に立つのが日課になっている。
同グループは16年8月に発足。九州電力川内原発1号機が再稼働したことを受け、玄海原発の再稼働を阻止しようと教育や医療に関係する市民が中心となって立ち上げた。現在は年間3万枚ビラを作成して住民たちへ配布、原発の危険性の周知徹底に努めている。
その活動のなかで住民たちの生の声を聞くことがあるという。チラシを受け取った玄海町のある町民からは、「原発の廃炉だと。俺たちを被ばく労働者にするつもりか」と怒鳴られた。北川氏は「これが立地自治体の現実」と述べる。「(町民も)原発が危険だという現実はわかっている。わかっているが、そこから脱出できない」と北川氏。ほかにも、農業や漁業に携わる人々にチラシを配ったときには、押し黙られてしまったという。
玄海町農家の苦悩
玄海町の農業従事者と接点をもっていたという九電の子会社の元社員は取材に対して、「玄海町での農業振興には無理があった」と振り返る。「農家がどんなに良いものをつくっても、産地をいうと『扱えない』と断られ、買ってもらえない。産地を明記しないとなると、市場の半値で買い取られる」と農家の苦しみを代弁する。「玄海町には稲作が大変な重労働となる棚田も多い。そんなところでつくっても、米は全然売れない。だったら、原発の関連施設の建設現場で働いたほうが儲かる」。
反原発運動とは距離を置くものの、この元社員も先述の市民グループと共通する点を指摘する。「安心だとする説明が全然ない」。
形骸化した訓練
2月2日、佐賀県では玄海原発の再稼働以降初めてとなる佐賀県原子力防災訓練が行われた。このとき、唐津市向島では初となる全島規模の避難訓練が行われた。唐津市内でフリースクールの代表を務める進藤輝幸氏は、同島での避難訓練に参加したが、そこで「放射能汚染は大したことない」と語る有識者がいたという。「脱力した。何のために訓練をするのかと思う人もいたのでは」と表情を曇らせた。
原発が立地する自治体および周辺に住む人々にとって、原発の再稼働は目の前の現実問題であり、健康への影響や緊急事態発生時など心配はつきない。
(つづく)
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