【スクープ】金融機関に「夫の生命保険を奪われた」~預金が「溶けていく」謎を追う/鹿児島3金融機関との闘い(2)
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鹿児島県内の3つの金融機関で、預金記録が不正に操作されていた疑いが浮上している。被害を訴えた女性はすでに10年以上前から、3金融機関と法廷で闘っている。
■預金者の無知につけこむ金融機関
金融機関が預金者に無断でこういった行為(前回記事参照)を行うこと自体が、極めて「犯罪的」なのは誰の目にも明らかだ。しかし、「かしん」側のたっての希望でもあり、金融知識や法律にも詳しくないAさんは声を挙げることができなかった。
「今となっては、あの時に『おかしい』と声を挙げていたら、こんな長い闘いにならなかったかもしれない」とAさんは言う。
Aさんの無知につけこむかたちで、「かしん」の行動はより大胆になっていった。気がつけばAさん名義の通帳が何冊も存在し、まったく心当たりのない貸付も発生。CD(キャッシュ・ディスペンサー)で連日のように預金がおろされていたことを証明する文書も残っている。こうした不可解な取引記録について、当時も後の裁判においても「かしん」職員は明確な説明をしていない。
「ほかの2つの金融機関も同じやり方だった」――夫を失った精神的ストレスからAさんは入院。入院中に病院へやってきたのが、鹿児島相互信用金庫(以下、「そうしん」)だった。「預金の半分をウチに預けてほしい」と迫る「そうしん」担当者。Aさんは母親に相談して、承諾することを決めた。
すると普通口座しか持っていないはずなのに、出てきたのは当座預金口座の証明書だった。Aさんに身に覚えはない。「銀行の関係者以外にこんなことのできる人間はいない」――振り返ると、思い当たる出来事があった。入院中のAさんを訪れた「かしん」職員が複数回、印鑑を借りていったことがあったのだ。「手続きがいろいろある」。そう言った職員が不正に使用したのではないかとAさんは考えている。その後、預金を取り戻すために起こした裁判では、その当時実際に印鑑を預けた職員を証人喚問で証言させたが、「記憶にない」「定期預金も、預かったことも知らない」と関与を否定している。
■裁判所は、署名が他人のものでも「問題なし」の判断
不審に思ったのは、本人の了解もなく定期預金口座に預金が移されたこと。通常なら、預金口座を預金者が選択するはずだが、なにも聞かれなかった。その後気づいたときには、1,000万円単位で複数回借り入れが発生したことになっていた。定期預金通帳にすべて記載が残っているが、Aさんはまったく身に覚えのないもの。借入申込書も出てきたが、記載されているのは車のローンや土地購入の手付金など、知らないものばかりだった。
Aさんの弟に3,000万円を貸し付けたという用紙も出てきたが、名前も年齢も違う。押印もない。署名もAさんのものとは異なるため、Aさんは筆跡鑑定を依頼。専門家2名に依頼した鑑定では、2名とも「Aさんと別人の筆跡」だという鑑定結果を出している。裁判でもこの筆跡鑑定は争点になったが、「別人が署名したとしても印鑑は本人が押したもの」と認定されたため、Aさんの主張は通らなかったという。奇妙なのは、印鑑について双方の弁護人間で「(印鑑に関しては)争わない」という取り決めがなされたこと。Aさんが「印鑑は行員が借りにきた」と、預けたことを認めているので真偽を争わないことになったのだ。
(つづく)
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