JR九州の株主総会(6月21日)まであと10日(後)
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【表1】を見ていただきたい。JR4社の売上高(営業収益)のセグメント推移表である。
~この表から見えるもの~
JR東日本・JR東海・JR西日本の3社は、連結損益決算書の売上高に事業別のセグメントを記載している。しかし、JR九州はセグメント間の売上高を相殺していない。そのため連結決算の売上高と一致しないため、JR九州は単独のセグメント推移表となっている。
(1)JR東日本・JR東海・JR西日本のセグメント推移表について
運輸事業
・JR東日本の運輸事業の売上高は前期比+203億円の2兆381億円で、そのシェアは67.9%。
・JR東海の運輸事業の売上高は前期比+370億円の1兆4,491億円で、シェアは77.2%。
・JR西日本の運輸事業の売上高は前期比+30億円の9,539億円で、シェアは62.4%となっている。3社とも50%を大きく超えており、運輸事業が主力であることがわかる。
流通・サービス業および不動産・ホテル業
・JR東日本の流通・サービス業は5,218億円。JR東海は2,533億円、JR西日本は2,455億円で2社合計してもJR東日本に届かない。
・不動産・ホテル業においても、JR東日本は3,490億円。JR東海は496億円でJR西日本は1,485
億円。2社合計しても1,981億円で、首都東京を本拠地とするJR東日本の底力がわかる。(2)JR九州の売上高の新旧セグメントの推移表および2020年の収益予想表について
運輸サービス業
・19年3月期から運輸サービス業は新セグメントに変更しているが、JR東日本など上位3社のように売上高=セグメントになっていないのが気になる。相殺すれば運輸サービス業の比率がさらに下がるからではないだろうか。
・19年3月期は新旧のセグメントを併記しているが、旧セグメントの運輸サービス業のシェアは37.3%。18年3月期の35.9%より1.4%上昇しているものの、本業である運輸サービス業の過去のシェアも30%台で、年々減少しているのがわかる。
・新セグメントによると、19年3月期の運輸サービス業のシェアは33.5%。旧セグメントの37.3%より▲3.8%と、大きく下落している。20年3月期(予想)ではさらに下落して、32.9%(▲0.6%)となっている。
・新セグメントに変更せざるを得なくなったのは、外資の投資ファンドからの要求であることは想像に難くない。投資ファンド側は、JR九州は公共の運輸業者ではあるものの、本業の運輸サービス業の売上高は33.5%、営業利益も42.4%しかなく、利益の過半は本業以外の事業収益であることが、増配および自社株買い求める根拠にしているようだ。
【表2】を見ていただきたい。上場JR4社の連結財政状態および配当性向の推移表である。
~この表から見えるもの~
純資産残高1位はJR東海で、前期比+4,233億円の3兆5,080億円(13.7%増)となっている。
・2位はJR東日本で、前期比+2,098億円の3兆943億円(7.3%増)。
・3位はJR西日本で、前期比+635億円の1兆1,798億円(5.7%増)。
・4位はJR九州で、前期比+375億円の4,207億円(5.7%増)。自己資本比率は51.8%と4社のなかでは一番高く、配当性向も30.2%となっており、外資ファンドが標的にしやすいボリュームの企業となっているのがわかる。
<まとめ>
JR九州の大株主で、米国に拠点を置く投資ファンド、ファーツリー・パートナーズは、JR九州に対して発行済み株式の10%、総額720億円を上限とする自社株買い提案しているが、JR九州は反対を表明している。JR九州は多くのローカル線を抱えており、沿線の自治体も不安視するなか、6月21日開催予定の株主総会は、どのようなかたちで決着するのだろうか。
(了)
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