2024年11月22日( 金 )

構造改革の成果、現れる トライアル、増収大幅増益(前)

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 (株)トライアルカンパニーの2019年3月期決算は、分社化による経費構造改革の成果が現れ、前期比で営業収益は7.7%増、経常利益は22.8%増と増収大幅増益となった。一時の足踏み状態を脱し、成長軌道を取り戻しつつあるが、居抜き店のスクラップ&ビルド(S&B)や物流効率の悪さ、低い自己資本比率など課題は多い。経常利益率は1.77%にとどまる。ドラッグストアなどが先行する小商圏市場への対応も急ぐ必要がある。

改装オープンの新宮店

九州の旗艦店、新宮店

 4月中旬、改装オープンしたトライアル新宮店。旧ニコニコ堂跡の居抜き店で、築後約30年経過し老朽化が進んでいたが、建替えずに約2カ月をかけて大型改装した。

 6月下旬の日曜午後。鮮魚売場は品定めの客十数人が群がっていた。以前のトライアルでは見られなかった光景だ。ガラス越しに見える調理場では男性従業員がマグロの解体作業をしている。ガラスには「調理受け付けます」の張り紙も。外から見ただけで5人の従業員がいた。

 九州のフラッグショップ(旗艦店)にするという意気込みは随所に見える。焼きたてパン(阪急ベーカリー)やレストラン、ファーストフードなどを導入し、安さ目当てで買い物を終えるとさっさと帰っていた客に、買い物を楽しんでもらおうという意図がうかがえる。食品売り場は木質床材を敷き詰め高級感さえ感じさせる。古くて汚かったトイレは面目を一新した。

 新たに導入したスマートレジカート。10分間観察してみたが、客が途切れることはなかった。若い家族だけでなく高齢の夫婦も目立つ。慣れると完全セルフレジより精算時間は短いのがメリットだ。もっとも、男性従業員3人を慣れない客のために常時配置しており、レジ要員の人手不足対策にはなりそうにない。

経常利益、過去最高に

 トライアルの2019年3月期決算は売上高が6.8%増の3,688億2,300万円、不動産賃貸収入などの営業収入を加えた営業収益が3,948億7,600万円(7.7%増)だった。純増ベースで24店(うち小型店7店)を出店し期末店舗数は238店となった。純増数は前年度の18店を上回り過去5年間では最高。

 同社は年15~20店の大型店出店を基本としている。「トライアル・クイック」などの店名で展開する小型店はほとんどが居抜き。

 営業利益は25.1%増の62億5,400万円、経常利益は22.8%増の69億9,800万円で、分社化以前を通じて過去最高となった。当期純利益は法人税の戻りがあり、35億7,800万円(37.4%増)と2期ぶりに増益を計上した。

 増益の主因は子会社から受け取る家賃地代収入の増加。18年3月期の148億円から185億円に、営業収入全体では261億円と22.3%増加した。店舗増で受取賃貸収入が増えたのが大きい。

 一方で、小売子会社への売上から原価を差し引いた粗利益(売上総利益)は95億円と22億円減少、率では2.59%と0.81ポイント低下した。差益である粗利益はいわば帳合料で、これを引き下げたのは子会社の取り分を多くし負担を減らすためだろう。

 販管費は293億円で4.6%増だった。これは商品部などの本社管理費と、減価償却費およびグループの物流会社(株)ティー・エル・エス(TLS)に支払う物流費などを含むと見られる。営業収益に対する販管費率は7.43%と0.22ポイント低下した。

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分社化で経費構造改革

 前期決算では人件費高で流通企業が軒並み収益を悪化させたなかで、見かけ上は増収大幅増収を達成したのは、分社化によるコスト構造の改革によるものだ。

 トライアルは15年9月持株会社に移行するとともに分社化を導入。流通企業では前例のない小売事業を独立させただけでなく、本社間接部門の一部や店舗開発、カード事業を分離した。狙いはコストの明確化と独立採算性による経費削減だ。

 荒療治を断行したのは、販管費の上昇で収益性の悪化に直面し始めたため。14年3月期は販管費が13.2%増と2ケタ台で増加、これが原因で経常利益は約40%減少、経常利益率は0.95%と一気に0.82ポイント悪化した。同社は構造的な高コスト体質に陥りかねないと危機感を深めた。どの企業も社歴を重ねるうちに人件費などの経費が増加。やがてそれが高止まりし収益を圧迫する。そうならないうちに早めに手を打ったのだった。

(つづく)
【宗像 三郎】

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