構造改革の成果、現れる トライアル、増収大幅増益(中)
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生鮮で成果
小売部門は段階的に店舗を新会社に移管していき、18年3月期までに完了。昨年9月には一定の成果が上がったとして大型店は「(株)トライアルオペレーションズ」に統合。生鮮・ベーカリーは「(株)メガ生鮮」に集約、ドラッグストアの「(株)トライウエル」と合わせ3社体制にした。
権限は子会社に大幅移譲した。要員計画や人事のほか、店舗改装も一定の範囲内なら子会社の判断で行えるようにした。事業予算を上回れば、独自に賞与などで従業員に報いることができる。現場に裁量権を委ねることで迅速な対応を図れるようにするのも大きな目的だ。
成果が顕著に現れたのが生鮮部門。昨年8月官報に掲載されたメガ生鮮の18年3月期決算によると、当期純利益4億1,000万円を計上、設立3期目で自己資本10億4,500万円を積み上げ、自己資本比率22.3%に達した。
生鮮はトライアルにとってお荷物で、永田久男代表取締役会長をして「水産は顧客のニーズに対応できていない」と嘆かせた。
分社化によって現場の創意工夫を取り入れることで鮮度と品ぞろえ、サービスを改善し収益向上に結び付けた。従来はプロセスセンターからの供給が大半を占め、価格は安いが鮮度は悪く、水産は塩干と解凍ものばかりと言われた。
従業員の負担増も
間接部門を分離したのは、決められた経費内で運営しコスト意識をもたせるためだ。経費予算を下回れば差額を賞与などで還元する。現場は10人でしていた仕事を9人で済ませられないか、知恵を絞る。
開発部門には成果報酬制を徹底させる。新店オープン後、売上が予算を超過すればその一部を開発会社に還元する。開発要員は良質な物件捜しにさらなる努力を求められる。いわばアメとムチを使い分けることで幹部・従業員の意識改革を図るのが狙いだ。
一方で、部門別独立採算性の採用で生産性向上を迫られる従業員の負担は増すといわれる。間接部門だと、成果を出すには10人でやっていた仕事を9人で片付けなければならなくなる。うまくいかなければトップを始めとする幹部は責任を問われる。
分社方式を軌道に乗せるには、営業と運営に通じた幹部人材が欠かせない。トライアルは、永田会長が早くから人材育成を重視してきただけに社歴の浅い会社にしては生え抜きの人材が多いといわれる。昨年就任した石橋亮太社長は40代前半で、タイヤ販売会社から同社に転じたが、手腕を認められトントン拍子で出世階段を駆け上った。前社長の楢木野仁司代表取締役会長はコンピューター専門学校出身の生え抜き。
決算の実態は不明
トライアルの決算からはグループの真の業績はわからない。
グループは持株会社(株)トライアルホールディングスを頂点とし、事業会社トライアルカンパニーや物流のTLC、情報システムの(株)ティー・アール・イー(TRE)、トライアルコリアなどの直系子会社、およびトライアル子会社からなる3層構造。直系子会社には昨年11月設立したAIカメラの開発会社「(株)Retail AI」(東京)があり、永田会長の子息・永田洋幸氏が社長を務める。
経営方針はトライアルHDが決め、トライアルなどの子会社はそれを執行する。HDの取締役会は永田会長とみずほ銀行出身の亀田晃一代表取締役ら5人で構成、事実上は永田会長と参謀役・亀田氏が意思決定していると見られる。HDは子会社から経営指導料を徴収し経費と株主への配当に充てている。
プロフィットセンターである小売子会社2社の業績は不明。(株)トライアルベーカリーの合併で18年3月期を官報に掲載したメガ生鮮は黒字だが、売上の大半を占める「トライアルオペレーションズ」は公表していない。販売員の人件費や水道光熱費、チラシなどの販促費を負担したうえ、家賃を親会社に上納しなければならない。意地悪い見方をすると、経費を子会社に付け替えたといえなくもない。
トライアルHDの連結決算でないとグループの実態はわからない。
(つづく)
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