構造改革の成果、現れる トライアル、増収大幅増益(後)
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居抜き店のS&B迫られる
課題は多い。その1つが居抜き店舗の(スクラップ&ビルド)。
同社は10年前後から総合スーパー跡などへの居抜き出店をやめ、新店出店に切り替えるとともに老朽店を閉鎖し近隣に新築するS&Bを進めてきた。居抜き店は複層階が多く、ディスカウント事業を始めた初期の段階では急成長の原動力になったものの、事業規模が拡大し店舗運営を標準化する必要に迫られると非効率が目立つようになった。売上成長率は新規出店に切り替えたのとS&Bによる店舗閉鎖で、14年3月期の9.4%から15年8.5%、16年5.5%、17年5.6%と低下を続けてきた。
佐賀県では居抜き店がなくなり10店全部が新店に置き換わった。福岡県では46店中、5割近くが居抜き店で、北九州空港バイパス店や上津役、直方、石田、福岡空港店など収益店が多い。耐震構造基準を満たしていない店舗が少なくないと見られる。郡部と違い移転が難しく、建て替える場合も売上への影響を抑えるため、段階的に進めざるを得ない。
経常利益率は1.77%
前期の経常利益率は1.77%。5%といわれる三角商事(株)や、ダイレックス(株)の3.69%に見劣りする。
原因の1つは物流効率の悪さ。店舗が全国に分散し、なかには青森、宮城県など県に1店しかない地域も。事業開始初期の段階でドミナントを考慮せず手あたり次第、居抜き出店をしたためだ。同社は自社の物流センターから配送できない遠隔地の店舗にはベンダーに物流を委託しており、その分コスト高についている。
利益率が低いのは先行投資が多いことも一因。代表例が自社で開発したというAI(人工知能)カメラで、中国深圳の工場で委託生産、コストを下げるため1台1万5,000円で外販を計画している。「スマートストア」を標榜しIT(情報技術)・AI投資を進めるが、収益への寄与は先で、現段階では開発費用など持ち出しが多いと見られる。
自己資本改善進まず
前期の自己資本比率は19.0%で、改善は進んでいない。16年3月期以降は毎期26億円~36億円の最終利益を上げ、自己資本を積み上げているが、出店などで総資産が膨らんでいるため、比率の改善は過去5年間で0.8ポイントにとどまる。
回転差資金の利用を減らしているため、有利子負債は増加傾向にある。前期末は283億円で、5年前比で80%増えた。この間、営業収益は40%しか増えていない。月商換算で0.86カ月と少ないのは、出店費用を手元のキャッシュ、つまり商品回転率と代金の支払いサイトの差から生じる回転差資金で一部まかなっているためだ。
トライアルの競争相手は(株)コスモス薬品やダイレックスなどの小商圏を対象に大量出店を続けるドラッグストアと小型ディスカウントストアだ。広域から集客するトライアルから客を奪っている。高齢化の伸展とともにこの傾向が強まると予想される。
トライアルも危機感を深め、小型店業態の開発を進めているが、試行錯誤の域を出ていない。コスモス薬品は医薬品の高粗利を安売りの原資に利用できるが、低粗利の食品単独では採算を取りにくい。ダイレックスは生鮮をすべてテナントに委託することで固定費負担を軽くしている。
昨年12月開業した「トライアル・クイック」は、深夜帯の人手不足を補うためスマートレジカートを導入、今後の小型店展開のモデルと位置づける。
トライアルが成長を持続するには低コスト経営を長期安定的に軌道に乗せられかどうかが課題となる。
(了)
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