『盛和塾』稲盛塾長、最後の講演(10)
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京都の地から始まり、全世界に広がった盛和塾という組織そのものは、本年12月をもって幕を閉じることになります。しかし、これからもフィロソフィを学び続けると同時に、そのフィロソフィを従業員と共有し、会社を健全な発展に導くことを通じて、1人でも多くの人を幸せにしていくという皆さま経営者の使命に変わりはありません。
むしろそれは終わりではなく、皆さまにとっては新たな始まりでもあります。今までは私が塾長として、皆さまに語りかけてきました。これからは、皆さま自身が自問自答しながら、この盛和塾での学びをさらに深め、実践していかなければなりません。
そして、私自身がそうであったように、今度は皆さまがその実践の輪を従業員やその家族といった周囲の人たちに広げていっていただきたいと思います。
この盛和塾で灯された火は、決して消えることなく、これからも皆さまの手によって受け継がれ、世界の隅々までをも照らし出していく力をもっていると信じています。
講話のなかでも触れたように、幸いにして私がこれまで盛和塾でお話ししてきたことのほとんどは、盛和塾機関誌のバックナンバーに収録されていますし、多数の書籍も市販されています。
また、稲盛デジタル図書館をはじめ、講話を映像でビデオ視聴することも容易にできるようになっています。
さらには、私の資料を収集・保管し、発信活動を行っていく稲盛ライブラリーという施設も整備されています。
私は過去に、もう語り尽くしたと思うほどに、皆さまに経営の要諦をお話ししてきました。それらの記録は皆さまがいつでも学べるかたちで残されています。
今後はぜひそうした教材を活用しながら、新たなかたちで学びを継続し、実践に努めていただきたいと思います。
この盛和塾を始めて、私が最も嬉しかったことは、多くの塾生から「もし盛和塾に入塾していなければ、私の会社は潰れていたかもしれない。
学んだ経営の要諦を実践することで、経営がうまくいくようになり、会社を救うことができ、従業員を路頭に迷わせることがありませんでした」という声を聞くことでした。
そのようなお話に接するたびに、私は「この盛和塾を続けてきて本当によかった」としみじみ思ったものです。
それはとりもなおさず、世のため人のために尽くすという私の人生観の実践であり、1人でも多くの経営者がすばらしい経営の舵取りを行うことで、その企業に関係するすべての人々をも幸せにすることができるのではないか、という純粋な思いから始めたことでした。
思い返せば、私が今日まで盛和塾活動を続けることができたのは、ひとえに私の言葉を真摯に聞いていただいた塾生の皆さまがいてくれたからであり、どうすれば経営がうまくいくのかという問いに対する答えを渇望し続ける皆さまの純粋な思いに支えられてきたからに他なりません。
ある意味では、皆さまのおかげで私はすばらしい人生を送ることができたように思います。
私は自ら創業した京セラとKDDI、さらには再生に携わった日本航空の経営を通じて、私が直接関わった企業に集う従業員の物心両面の幸せを追求することに努めてきました。
そのことに対して、この場を借りて心から感謝したいと思います。振り返ると、私自身、本当に幸せな時間を皆さまとともに過ごさせていただきました。
盛和塾の前身となる盛友塾が発足した1983年以来、今日まで36年にわたって、皆さまと日本や世界を旅し、車座になり、膝を突き合わせながら、親しく語り合ってきました。
(了)
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