九州地銀（18行）の20年3月期（19年6月期）決算を検証する (4)

　【表1】を見ていただきたい。九州地銀（18行）の2020年第1四半期（6月期）決算の貸出金残高順位表である。

～この表から見えるもの～

　九州地銀18行の19年6月期の貸出金残高は、前年比＋2兆2,984億円の39兆3,085億円（前年比6.2％増）となっている。19年3月末から6月末の3カ月間の増加額は7,651億円で増加率は2.0％。増加している銀行は10行で、8行がマイナスとなっている。

　貸出金残高1位は福岡銀行。前年比＋7,793億円の10兆2,612億円（8.2％増）。

・2位は西日本シティ銀行。前年比＋2,172億円の7兆1,281億円（3.1増）。

・3位は肥後銀行。前年比＋2,389億円の3兆5,700億円（7.2％増）。

・4位は鹿児島銀行。前年比＋2,261億円の3兆5,240億円（6;9％増）。

・5位は昨年8位だった十八銀行。前年比＋3,220億円の2兆0,395億円（18.7％増）。大幅に伸ばして、トップ5に昇格している。

　昨年6月期と比べて順位の変動があったのは、宮崎銀行・大分銀行・親和銀行の3行。十八銀行が5位となったことから、それぞれ6位～8位とランクを1つ下げたが、9位以下の順位変動はなかった。

　貸出金が前年比減少している銀行は南日本・豊和銀行・佐賀共栄の3行。いずれも第二地銀である。

・12位の南日本銀行の貸出金は、前年比▲11億円の5,614億円（前年比▲0.2％）。競合する宮崎銀行の貸出金は、前年比＋604億円の1兆9,916億円（3.1％増）と増加しており、宮崎太陽銀行が苦戦しているのがわかる。

・15位の豊和銀行は前年比▲87億円の4,016億円（▲2.1％）。競合する大分銀行は前期比＋292億円の1兆8,167億円（1.6％増）と明暗を分けている。ただ、大分銀行は第一地銀11行のなかで、最低の伸び率となっている。

・18位の佐賀共栄銀行は前年比▲29億円の1,816億円（▲1.6％）。競合する佐賀銀行の貸出金は前年比＋1,807億円の1兆7,427億円（11.6％増）となっており、佐賀共栄銀行が単独で生き残るには厳しい経営環境にあるようだ。

　金融グループの19年6月期（連結）を見ると、1位のふくおかFGは十八銀行を傘下行としたため、前年比＋3兆0,029億円の15兆4,782億円（24.1％増）と大幅に増加。以下、山口FG、西日本FH、九州FGとなっているが、ふくおかFGのシェアは前年の37.4％から41.5％と大幅にアップしている。また19年3月期と比較すると、ふくおかFGの増加額は2兆4,840億円（伸び率19.1％）、九州FGは1,969億円（2.9％増）、山口FGは53億円（0.1％増）となっているものの、西日本FHは▲29億円（▲0.0％）と今期に入り低迷している。

＜まとめ＞

　ふくおかFGと十八銀行は2016年6月、公取委に対し、経営統合を申請。17年4月に統合を予定していたが、公取委の懸念を解消する案を示せず、統合時期を2度延期していた。

　そこで、ふくおかFGと十八銀行は、「他行（九州FGや佐賀銀行など）への債権譲渡により、問題視されてきたシェアの高さは緩和される」とする報告書を公取委に提出して、昨年8月にやっと承認された。

　今回の経営統合は地域の融資シェア（長崎県の場合は約7割）が高くても、一定の債権譲渡をすれば認められるという、初めてのケースとなった。

　しかし、公取委の承認条件は以下の通り、十八銀行の貸出金推移を見ればまったく無視されているのがわかる。承認前の18年6月期の貸出金は、前年比＋675億円の1兆7,175億円（前年比4.1％増）。19年3月期の貸出金は前年比＋2,148億円の1兆8,851億円（12.9％）。ふくおかFGと経営統合して傘下行となった19年6月期の貸出金は、前年比＋3,220億円の2兆0,395億円 （18.7％増）と大幅に増加しているからだ。

　九州地銀18行の18年6月期における十八銀行の貸出金シェアは4.6％。それに対し19年6月期のシェアは5.2％に増加。長崎県内のシェアではないにせよ、九州地銀18行における貸出金のシェアも確実に増加しているのがわかる。

　ふくおかFGと十八銀行の経営統合は、「承認さえ得れば何でもありき」の状況になっており、公取委は、この経営統合の承認を最後に、官邸の意向を受け入れて、地銀の経営統合は「金融庁にお任せする」と管轄外にするのではないだろうか。

（つづく）
【（株）データ・マックス顧問　浜崎裕治】