2024年11月24日( 日 )

【日韓問題・インバウンドへの影響】市内繁華街周辺 観光地柳川市の今(前)

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 平日休日問わず多くの人で賑わう繁華街周辺や、これまでインバウンド需要の恩恵を受けてきた観光地の1つ福岡県柳川市。このたびの日韓関係悪化がどのような影響をおよぼしているのか、現地の人々に話をうかがった。

街中を歩く人の声「減った」が多数

 福岡市内で最も多くの人々で賑わう天神地区周辺。道行く人々20人に対し、街中で韓国人を目にする機会をうかがったところ、18人が「減った」と回答、「変わらない」と答えた人は2人にとどまり、「増えた」と答えた人は0人という結果になった【図Ⅰ】。

【図Ⅰ】町中で韓国人を目にする機会

 「減った」と回答した人の声を聞くと、「歩いている韓国人は見かけるが、以前と比べて減った(気がする)」(50代女性ほか多数)という回答が多くを占めたほか、「街中で韓国語を耳にする機会が減った」(30代男性)、「昨年の今ごろは団体で行動する韓国人の姿をよく見かけたが、今は団体での旅行客はあまり見かけない」という声も。反面で、「最近は韓国人よりも、台湾や中国、さらには東南アジア系の方を多く見かける」(20代女性)という声も聞かれた。

商業施設・各店舗への影響は

 中洲川端駅直結の某量販店では、いつもなら入店を促すチラシをスタッフが配ると韓国人が行列をつくっていたが、その光景がめっきり見られなくなった。日韓関係悪化の影響をもろに受けているのであろう。

 その一方、福岡市内で大型商業施設を運営するA社の担当は、「統計を取っていないので明確な指標で表すのは難しいのですが」と前置きをしたうえで、「各施設の直近の来場状況は前年の来場者数を超えています。日韓関係悪化の報道を受け、旅行者数が減っているという報道などから、確かに韓国人の来場者数は減っているのかもしれません。

 しかしその分、欧米や東南アジアからの観光客が増加して、減少分をカバーしているのではないでしょうか」と話した。また、「韓国人の買い物客は特定の店で集中的に買い物をする傾向があります。そう考えると、日ごろから韓国人の利用が多い一部店舗からは、『減少した』という声が聞かれるかもしれませんが、当社は大きな影響はないと見ています」と分析した。

 天神地区周辺にある各種店舗(36店舗)に韓国人の来店頻度についてうかがったところ、36店舗中16店舗が「減った」と回答。「変わらない」と答えた店舗は20店舗だった【図Ⅱ】。

【図Ⅱ】韓国人の来店機会

「変わらない」と回答した店舗の声を聞くと、「もともと韓国人の利用が少ない」(レディスファッション店40代女性ほか)ことや、「個人客が主なので、減っているという実感はない」(小売店20代女性)ことを理由として挙げた。

 自店舗の売上への影響はあるかという質問に対しては、「ない」と答えた店舗が34店舗、「ある」と答えた店舗は2店舗にとどまった【図Ⅲ】。

【図Ⅲ】自店舗の売り上げへの影響

 売上への影響が「ない」と答えた店舗は、「韓国人団体客の買い物は見かけなくなったが、もともと買い物客に占める割合が少ないので、売上に大きな支障はない」(レディスファッション店20代女性)ことを例に挙げた。

 また、「8月中旬くらいから韓国人の利用が減ってきている」(紳士服店30代男性)、「韓国人の利用が減って、代わりに韓国以外のアジア圏(中国、台湾、香港、東南アジアなど)からの利用客が増えた」(小売店30代女性ほか)といった声から、自店舗への直接的な影響はないにせよ、利用客の構成に変化が生じていることを間近に感じ取っている傾向が見て取れた。

 売上への影響が「ある」と答えた店舗から聞かれたのは、「かつての“爆買い”とまではいかないが、団体客が減ったせいでドラッグストア系の店舗は影響を受けているところもある」(小売店50代女性)という声。別の店舗では、「団体での韓国人の利用は見かけなくなった。感覚値だがおよそ8割程度減った」(飲食店30代女性)といった声が聞かれた。

 韓国から日本にやって来る旅行客が減少したことにともない、街中で韓国人を見かける機会が減ったことは間違いない。しかし、商業施設の様子や各店舗へのヒアリングを見る限り、その影響はまだ限定的と思われる。

(つづく)
【長谷川 大輔】

(後)

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