スイスの徴兵制存続に見る日本人との国防意識の違い(後)
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拓殖大学客員教授 濱口 和久
<平和ボケ日本の現状>
一方、日本はどうかというと。日本は高速道路の設計コンセプトからして、スイスとは大きな発想の違いがある。日本では高速道路というのは、大きく曲がったり、あるいは小さく曲がったりするような高速道路が多い。有事を想定した場合には、高速道路はひたすら真っすぐのほうがよいはずだが、国土交通省は真っすぐにしない理由を次のように説明をしている。「真っすぐの高速道路にすると、居眠りが多くなり、事故が増える。だから大きくカーブを描いたり、小さくカーブを描いたりという変化をつけている」。
たしかに平時はそれでいいかもしれないが、有事の場合、高速道路は戦闘機の滑走路としても利用することを考えれば、一定の距離の真っすぐな高速道路は必要である。他にも日本の平和ボケの事例として、原子力発電所の警備がある。海外の原子力発電所では、武器を携行した軍隊がほぼ100パーセント警備を担当している。
ところが、日本の原子力発電所では、民間の警備会社が何も武器を持たず、警備をやっているケースがほとんどである。日本では原子力発電所にテロ組織などが侵入してくるような想定をしてこなかったからである。そのために民間の警備会社が武器も持たずに警備をするという体制が長年続けられてきた。これは世界から見たら、非常におかしなことであり危険なことだ。まさに世界の常識は日本の非常識といったような状態になっているのである。
<日本はスイス人の国防意識(覚悟)を見習うべき>
スイス人は、誰一人として、非武装中立で平和が守れると思っていない。スイスの国民が自分たちの国を守るためのバイブル本がある。スイス政府編『民間防衛』だ。スイスでは約260万部が発行され、各家庭に無償配付されている。日本でも翻訳されて原書房から発売され、約15万部が売れている。戦後、日本では「徴兵制=軍国主義=戦争への道」という風潮が広がった。一方、スイスでは今回の国民投票でも徴兵制の維持を選択した。日本では今後も徴兵制を導入するような動きにはならないだろうが、日本人はスイス人の国防意識(覚悟)を見習うべきである。なぜなら、スイスよりも日本の置かれた地政学的環境(東アジア情勢)のほうが厳しいからだ。
(了)
<プロフィール>濱口 和久 (はまぐち かずひさ)昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ。関連キーワード
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