日本経済の飛躍のカギ“水力(ウォーター・パワー)”(1)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
世界最大の種子メーカーであるアメリカのモンサントは、20年以上前から「水道ビジネスほど将来の高い成長を秘めた産業はない」との認識を明らかにしてきた。そのため、日本企業がもつ海水の淡水化技術、汚水の浄化技術、飲料水や工業用水を人工的につくり出す造水技術に熱い眼差しを寄せており、この間、そうした技術をもつ日本企業に対する買収攻勢を展開してきた。
ウォーター・バロンズにとっての「おいしい話」とは
世界を見渡すと温暖化の影響もあり水不足が急速に進行し、水利権をめぐる紛争が絶えない。また、上下水道設備の老朽化も顕在化するなかで、先進国、途上国を問わず、水源の確保や水道インフラの整備にこれまで以上に資本投下を行う必要性が高まっている。とくに途上国における水環境の劣悪さは深刻である。
21億人が安全な水を飲むことができず、45億人がトイレのない生活を余儀なくされているからだ。言い換えれば、世界人口の40%にあたる人々が衛生的な水の利用ができていないのである(出典:JMP報告書『衛生施設と飲料水の前進:2017年最新データと持続可能な開発目標(SDGs)基準』)。
ユニセフによれば、汚れた水を飲むことで命を失う5歳以下の子どもの数が毎日3,800人に達している。これは連日、ほぼ満席のジャンボジェットが8機も墜落しているに等しい状況だ。
しかし、このような状況は、世界の大手水企業(ウォーター・バロンズ)や新たに水道事業への参入を目論んでいる巨大企業にとっては、千載一遇のチャンスと受け止められているから看過できない。実際、水関連のビジネスには今後10年で1兆ドルを超える投資が見込まれている。それほど、水をめぐる危機的状況は「ウォーター・バロンズ」にとっては「おいしい話」なのである。
国連は途上国の上下水道整備のためだけで、年間1,480億ドルの資金が必要だと訴えている。現実にはそこまで各国政府の資金的余裕はないものの、世界の水企業は必死でマーケットの拡大に余念がない。また、こうした水ビジネス企業の株式を組み込んだ投資信託は好調な売れ行きを示している。
「モンサントに遅れるな!」と、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)や、ドイツのシーメンスを始め、1兆円企業であるヴェオリア、スエズ、テムズウォーターといった欧米企業は、「今後、水関連ビジネスは少なく見積もっても4,000億ドル(約40兆円)の規模に膨れ上がる」との予測の下、売上増強に向け国際機関の予算獲得に走っている。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。【未来トレンド分析シリーズ】の記事一覧
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