2024年11月23日( 土 )

『脊振の自然に魅せられて』「金山の道標立て替えと修復作業」

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2013年3月23日 新しい金山の道標への入れ替えが完成
2013年3月23日 新しい金山の道標への入れ替えが完成

 2008年10月から設置してきた脊振の道標(参照記事)もほぼ完成、2013年までの5年間で70本近く設置したことになる。

 金山(967m)の山頂に墨で書かれた立派な道標が立っていた。しかし、年々、支柱が痛んできて腐って倒れそうになっていたので、「これは立て替えるべきだ」と思い立った。

 「早良区役所の区長に文字を書いてもらったら記念になる」、そう発案した私が早良区役所企画課に相談したところ、職員が区長にお願いしてくれた。

 当時の区長は道標設置を開始してからは、2代目にあたる井上ルミ区長(女性)だった。区長は私の申し出を快く引き受けてくれ、区長室で習字の上手な臨時職員から手習いされたようだ。何度も練習し、いよいよ木製の道標に文字を書き込む瞬間がきた。

 手が震える、どうしようか?墨をたっぷり付けた筆をもったまま、道標の上でためらっていた時、墨がぽとりと落ちた。やるしかないと心に決めて「金山」と大きな文字を書き上げた。これは私が区長から聞いた話である。

 こうして堂々とした文字が書かれた道標が完成した。

 2013年3月24日、ワンゲルの学生、OB、区役所の女性職員Oとともに金山の山頂に道標を立てに行った。この日は天気も良く、絶好の登山日和だったことを覚えている。

 各々が道標や支柱、工具をもち、佐賀県側の登山口から金山山頂へと向かい、傷んだ古い道標を外し、新しいものへと入れ替えていく。

 道標の裏には「西南学院大学ワンダーフォーゲル部50周年記念、揮毫 井上ルミ」と書き込んである(古い看板は早良区役所に保管されている)。

 それから8年、山の厳しい自然環境に耐えながらも道標の文字が少しずつ薄れてきたので、今年の春、油性塗料で上書きして修復をした。

 ところが8月の長雨で、上書きした文字が、すっかり流れ落ちてしまったようだ。登山アプリのヤマップに金山登山の記事があり、そのなかの一部の写真で文字が薄れていることを知った。

すかり薄れてしまった文字
すかり薄れてしまった文字

 今年の夏は不安定な天気が続き、台風も接近した。天気が落ち着くのを待って金山の道標修復に仲間のMを誘った。

 ウイークデーでもあり、人も見かけない静かな金山山頂で、2人だけで道標の修復作業をした。

 ボルトを工具のラチェット(便利なスパナ)で外し、筆と墨汁で文字の上塗りをした。そして、墨汁が乾くのを待ち、天然の柿渋を何度か重ね塗りして防水加工を施した。

 支柱にも柿渋をたっぷり塗って耐久性を高め、外したボルトにも「雨風に耐えてほしい」という思いを込めて柿渋を塗った。柿渋は古くから天然素材の防水塗料として使われており、和傘の仕上げとしても使われている。

 柿渋が乾くまでの間、静かな山での休憩を2人だけで楽しんだ。台風13号が近づいているのか、少し強めの秋風が木々を揺らしていた。

 柿渋が乾いたところで、ボルトを締めて道標を設置。柿渋により重みのある道標に仕上げることができた。

柿渋で味わいのある道標となった
柿渋で味わいのある道標となった

2019年9月19日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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