2024年12月22日( 日 )

新しいフロンティアの開拓に向けてイオンの逆襲が始まった

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 合従連衡を重ねて日本一の小売企業に昇りつめたイオン。今後もその手法を用い、事業の拡大を目論んでいるが、次代の成長に向けて新たな取り組みにも着手している。リアル店舗のコンテンツをイノベーションで刷新し、てこ入れしネットに対抗、海外事業で成長を担保、そしてデジタルシフトで次代の成長を担保しようとしている。

改革に着手し新たな需要を喚起

 イオンは営業収益8兆5,182億円の日本一の小売業だが、小売だけではなく、金融、デベロッパー、サービスなど多岐にわたる事業を展開し、ゆりかごから墓場まで生活に関するあらゆるシーンで商品・サービスを提供している「生活総合産業」企業である。

 しかし、主力のGMS(総合スーパー)事業はなかなか低迷から脱しきれず、十数年で10倍以上の規模となり急成長したSM(スーパーマーケット)事業も低収益構造から抜け出られていない。

 そこで、改革に着手し、有力専門店、ドラッグストア、コンビニといった他業種に切り崩された失地を回復し、さらに新たな需要を喚起し、新たなイノベーションでリアル店舗として生き残りを図り、収益力を高めて「金の卵」に生まれ変わらせようとしている。

 一方で、成長を担保するため、海外に活路を求めアジアシフトを進め、国内で培ったイオン流と現地の事情に合わせたローカライズの手法を用い、新たな収益源にするため着々と地歩を固めて事業を加速させている。

 今後は、成長ドライバーとして存在感を高め、国内事業にその成功事例をフィードバック、国内より早くデジタル化も推進し、新たなビジネスモデルを構築していくだろう。

 イオンには「ヒト」「モノ」「カネ」はあるが、これからの成長のカギとなる「ソフト」は脆弱だ。巨費を投じて立ち遅れているデジタル化を推進しようとしているが、巨大企業ゆえのダイナミズムや機動力の欠如、柔軟性の喪失といった問題もあり前途は多難だ。

 岡田元也社長はかつて「リアルとネットの売上を1:9にする」と発言したこともあり、デジタル化への意欲は極めて強い。

 そこで、マーケットプレイスの構築、店舗のデジタル武装に取り組み、2020年には1兆円の売上を掲げたが、思うような成果が上がっていないのが現状で、目標達成には程遠い。

 ネット通販の強化や物流の自動化に向け、22年2月期から3年間で最大1兆円を投じ、デジタル戦略を強化するが、その未来図がどのようになるのかまだ明らかになっていない。

 この状況を打開するためにはスタートアップ企業のような活力と既成概念にとらわれない人材がカギとなる。

小売業に求められる変革

 恐竜はその巨大さで気候変動などの変化に対応できず絶滅した。人口減、超高齢化や所得格差社会、都市集中といった社会構造が激変するなかで、生活者の意識・行動も変化、さらにIT・AIの進化、可否はともかくグローバル化が否応なく進む。

 小売業は変化対応業でこうした変化に的確に対応しながら、創造的破壊が求められ、さらに新たなバリューを生み出していかなければならない。

 次の成長ステージに乗るためには、巨像イオンが流通シーンで過去の成功体験を否定し、自己変革を行う必要があり、新たなイノベーションを起こすには組織改革も急務となる。

 現場に権限を委譲し、縦割り組織を改めているが、膨張した組織をいったん解体し、アメーバ的な有機的なものに変える必要もある。

 そして生産性を向上させ事業構造を抜本的に変え、儲かるビジネスモデルを数多く生み出していくことも求められている。

 創業家の岡田家には「大黒柱に車をつけよ」という有名な家訓があり、まさしく現状に安住せず変化に柔軟に対応することだ。原点をいま一度見つめ直し、未知の領域に踏み込み果敢にチャレンジする意欲的な人材をどれだけ確保できるか、ヒトの問題も今後の命運を左右する。

 既存事業の延長線上にイオンの未来はない。いまこそ、現在から未来を見通して、新たな戦略で地平を切り拓いていくときである。

 世界における小売業のイオンのポジショニングは14位、トップのウォルマートとは売上で10倍以上の開きがあり、10位のアマゾンドットコムの後塵を拝している。これから世界と戦っていくためには事業だけではなくあらゆる面での海外シフトも進めていかざるを得ない。

 そのためのグランドデザインを描くことができるかで10年後のイオンの未来は決まるだろう。そして、いま、新たなフロンティアの開拓のために逆襲を開始しようとしている。

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