アベノミクスがもたらした日本経済崩落 政治刷新による国家保障最低ライン引き上げ急務(1)
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経済学者・評論家 植草 一秀 氏
日本経済の凋落が目を覆うばかりである。メディアによるアベノミクス礼賛と茶坊主言論人の日本経済礼賛は戦時下日本を彷彿させる。大資本利益極大化と国民窮乏化を追求する政策運営の終着点は破滅でしかない。すべての国民に保障する最低ライン引き上げで日本全体を底支えしなければ、日本経済の破局は近い将来に現実化してしまうだろう。
失われた30年
日本経済のバブル崩壊が始動してから丸30年の時間が流れる。1989年12月29日に日経平均株価は38,915円の史上最高値をつけた。30年が経過した2019年10月現在の水準は21,000円台にとどまる。このことは、日本経済が停滞の30年間を経過したことを意味している。名目GDPは1997年度に533兆円の水準を記録した後、2016年度に537兆円を記録するまで、一度もこの水準を超えることがなかった。バブル崩壊が始動してからの失われた10年は20年になり、失われた30年になった。
安倍内閣が提唱した経済政策を安倍首相は自らアベノミクスと称し、これが成功したかのような言説を振りまいてきたが、日本の主権者で経済改善の実感を持つ者は皆無に近い。経済運営を評価する尺度の基本は、実質GDP成長率である。経済活動の規模の伸長を測る尺度であるからだ。
第2次安倍内閣が発足して以降の実質GDP成長率(前期比年率)平均値は+1.3%である。これは、2009年から2012年の民主党政権時代の+1.7%を大幅に下回る。第2次安倍内閣が発足してからの日本経済は超低迷を持続して現在に至っている。
国民の多数は賃金労働者であり、この人々にとって最重要の経済指標は1人あたり実質賃金の推移だ。第2次安倍内閣が発足して以降、1人あたり実質賃金は約5%減少した。2019年10月の消費税増税によって、1人あたり実質賃金はさらに減少することになる。戦後最悪の経済状況が生み出されていると言って過言ではない。
偽造・ねつ造・安倍晋三
1994年の名目GDPを100として、その後の推移を検証すると、米英の名目GDPは250から300の水準に拡大した。ただ日本だけが1994年の水準からほとんど浮上できずにあえいでいる。中国の名目GDPは1995年には日本の7分の1の水準だった。それが15年で追い抜かれ、さらに5年後の2015年に日本の名目GDPが中国の半分以下になるまで水を空けられた。
「上位1%のエリートしかしらない?ニッポン経済世界最強論!」などという日本経済礼賛本がはびこってきたが、権力者に対してすり寄り、媚びを売る輩の増殖が日本の空気を象徴している。客観的に見れば日本経済は明らかに凋落しており、その現実を直視することなしに新たな次元を切り拓くことはできないのだが、根拠のない自画自賛、権力賛美の風潮は、敗戦前の日本の姿と重なるものだ。
1人あたりGDPの水準で日本は2000年に世界第2位の地位にあったが、2018年には26位に凋落した。韓国は2000年が35位、2018年が31位である。安倍内閣は韓国敵視政策を推進するが、米国に対するひれ伏す姿勢の裏返しとして韓国に対して居丈高に振る舞う姿は哀れでもある。かつては日本と韓国の経済水準に大きな開きがあったが、いまや1人あたりGDPの水準でもほぼ同列に転じている。
次世代通信技術5Gの特許出願件数では中国が34%を占めて独走し、次いで韓国が25%のシェアを確保している。次いでフィンランドと米国が15%を確保、スウェーデンが8%と続き、日本は5%の6位に低迷している。しかも、特許を出願している日本企業の資本の過半が外国資本に握られているというありさまだ。
安倍内閣は日本経済の拡大継続期間がいざなぎ景気を超えて既往最長になったと喧伝している。1965年から1970年にかけてのいざなぎ景気では実質GDP全体は約7割増大した。ところが、今回は7%程度の増加しか観測されない。
しかも、日本経済は2014年3月を起点に、2016年5月まで2年超の景気後退期を経過していることが、鉱工業生産指数の推移から鮮明に読み取れる。前回の消費税増税とその後の円高進行などのためだ。この事実を隠ぺいして、公文書の偽造だけでなく景気拡大の判定までねつ造している驚くべき政権が存在している。安倍内閣下の景気拡大は「いかさま景気」と称するのが適正だ。「偽造・ねつ造・安倍晋三」の呼び声がこだまするのも当然のことといえる。
(つづく)
<プロフィール>
植草 一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、スタンフォード大学フェロー、早稲田大学教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、オールジャパン平和と共生運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続している。経済金融情勢分析を継続するとともに、共生社会実現のための『ガーベラ革命』市民連帯運動、評論活動を展開。政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。関連記事
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