日本・OECD共催セミナー ゼロカーボン建築へ新規制を議論

満席となったセミナー会場
満席となったセミナー会場

 日本における住宅・建築物の脱炭素規制について、次のステップの議論が始まっている。すでに規制を導入した欧州の政策担当者などが来日し、日本の産官学のトップリーダーと議論する日・OECDハイレベル政策セミナー「ゼロカーボン建築~ライフサイクルCO2の削減に向けた世界の動向~」が東京・丸の内で開かれた。今後5年間の脱炭素施策について、建材などの製造段階から脱炭素基準を設けて規制するゼロカーボン建築に関する取り組みが主な議題となった。開会に際して中野洋昌・国土交通大臣は、「住宅・建築物のライフサイクルCO2の削減に向けて、諸外国やOECDと協調し、グローバルの課題解決に貢献していく」と話した。

業界連携と段階規制で

英語であいさつする中野洋昌・国土交通大臣
英語であいさつする中野洋昌・国土交通大臣

    2月20日に東京駅に隣接するJPタワーで開催された今回のセミナーは、約350人の定員が昨年末の募集開始からまもなく埋まるなど関心の高いものだった。欧州を中心に規制導入が進められている「ホールライフカーボン(WLC)」(建築物の建設から解体までのライフサイクル全体のCO2)について、日本でも省エネ基準適合義務化の次のステップとして議論を開始。今回のセミナーでは、WLCで先行する欧州の現状や日本での取り組み状況の報告などが行われた。

 共催者の1つである(一財)日本建築センター顧問の和泉洋人・東京大学特任教授によるあいさつの後、OECD(経済開発協力機構)のラミア・カマル・シャウイ起業・中小企業・地域・都市センター(CFE)局長が、世界で初となるOECDレポート「都市におけるゼロカーボン建築:ホールライフサイクルアプローチ」の概要を発表した。このレポートでは、11カ国7都市の政策分析を行い、6項目の主な課題の指摘と3つの提言を盛り込んだ。

世界初披露となった「都市におけるゼロカーボン建築」について発表するOECDのラミア・カマル・シャウイCFE局長(この報告書の政策ハイライトは日本語版が無料でダウンロードできる)
世界初披露となった「都市におけるゼロカーボン建築」について発表する
OECDのラミア・カマル・シャウイCFE局長
この報告書の政策ハイライトは日本語版が無料でダウンロードできる

 ラミア局長は、「正確なデータがなければ対策ができない。政策立案者は地域ごとのニーズに合わせたアプローチで段階的に進めていく必要があり、建設業界と密に協力し、中小企業が適応するための時間を与えることが重要だ」と話した。段階的な規制導入と実効性を確保するために、業界の協力が不可欠であることを示唆した。一方で、国と地方自治体が融合して規制を導入する事例は4カ国にとどまっている点を指摘し、持続可能な都市の実現に向けて、政策実行者が一丸となってゼロカーボン建築を推進すべきと提案した...

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