6日、建設コンサルタント事業を展開する(株)FCホールディングス(本社:福岡市博多区、福島宏治代表)は、プライベート・エクイティファンドのT Capital VI投資事業有限責任組合を母体とするTCB-14(株)(本社:東京都千代田区、小森一孝代表)によるTOB(公開買付け)の対象となり、同社の完全子会社化を目指す買収が始まったと発表した。TOBは8月7日~10月14日の45営業日にわたり実施され、買付価格は1株あたり1,420円に設定された。
買付予定数は672万6,630株で、下限を448万4,400株(所有割合66.67%)とする一方、上限は設けていない。買付総額は最大で約95億5,000万円にのぼる見込み。決済の開始日は10月21日を予定している。買付け成立後には、株式併合などを通じたスクイーズアウトを経て、FCホールディングスの株式を非公開化し、最終的には公開買付者との吸収合併も視野に入れる。
買収主体となるTCB-14は、25年7月に設立された特別目的会社で、全株式をT Capital VIが保有する。T Capital VIを運営するティーキャピタルパートナーズは、旧・東京海上グループに属し、現在は独立系PEファンドとして国内中堅企業への投資を続けている。これまでにザイマックス、ゼロ、ロピア、ジーシー昭和薬品など32社への投資実績をもつ。
FCホールディングスの取締役会は、8月6日に開いた会議で、本件TOBに賛同し、株主に対して応募を推奨する決議を行った。同社は「中期経営計画の達成を見据えた既存事業の深化と、新分野への拡張、M&Aによる非連続な成長の加速が不可欠」としており、ファンドの支援を受けて次の成長ステージに移行する方針を示した。
今回の買収にあたっては、買付者による最終提示価格が当初案の1,340円から段階的に引き上げられ、最終的に1,420円で着地した。これは8月1日時点の終値1,171円に対して21.26%のプレミアムを加えた水準となる。
FCホールディングスは、福山コンサルタントを中心に、モビリティ、環境、防災といった多様な領域でインフラ整備や都市計画に関する技術支援を行っており、とくに九州や東北での事業基盤が強固とされている。今後はティーキャピタルパートナーズの支援を得ながら、事業の拡張と企業価値向上に取り組む構えだ。
25年6月期は増収増益
同日、FCホールディングスは25年6月期の連結決算を発表した。それによると、売上高は85億3,100万円(前期比0.1%増)、営業利益は11億9,100万円(同4.9%増)、経常利益は11億5,500万円(同1.8%増)、当期純利益は7億4,800万円(同11.6%増)で、増収増益となった。
決算要因としては、所属する建設コンサルタント業界において、防災・減災、老朽化インフラ対策、グリーントランスフォーメーションの推進といった政策によって国内の公共投資が前年度並みの規模を維持し、安定した市場環境が続いたことが挙げられる。一方で、海外においては地政学的リスクや不透明な経済環境の影響により新規受注が低迷した。
結果として当期の受注高は80億7,500万円(前年同期比6.3%減)、繰越を含む総受注量は136億4,800万円(同3.2%減)となった。ただし、売上高は高稼働率を維持したことで前期を上回った。営業利益・経常利益も、生産性向上や経費削減の効果により増益となった。
来期(26年6月期)の業績予想については、前述のTOBにより上場廃止を予定していることから業績予想は開示していない。
【寺村朋輝】