【2026年 年頭所感】80年の平穏な歴史が 日本を潰すファクターになる

(株)データ・マックス
代表取締役会長 児玉直

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 1945年から80年が経過した。ゼロどころかマイナスから、日本経済の復興に国民全員が必死かつ一心不乱に奮闘した。その結果、40年後の85年時点では、アメリカの経済力の実体に迫るところまで日本は成長した。さらに平成バブルの頂点までは、その勢いを持続できた。その後、リーマン・ショック(2008年)を迎えて以降、日本の経済力は衰退し続け、国民の生活水準は貧困化の状態に陥った。本来ならば、国民全体が「生活苦」を掲げて運動が高まってもよいはずである。しかし、現実には一向に動きがない。この傾向には驚きを禁じ得ない。一言で表現すれば、「国民総平和ボケ病」に陥っているといえる。ボケるだけであれば、さほど深刻さはない。問題であり深刻なのは、常識規範が失われていくという進行形の事態である。80年が経過した以上、「根本的な変革手法」が必要になるはずだ。そのような意見が強まってもよいはずであるが、あまりそうした動きは見えない。

平和ボケによる道義規範の崩壊

 1.まず、25年12月22日付西日本新聞朝刊にて、「海外視察費 随契後に増額(福岡県議会)」というスクープ記事が掲載されていた。たとえば、25年1月の米ハワイ行きでは、当初契約額97万9,000円が、最終契約額651万1,840円と、実に6.65倍に膨張している。

 もともと福岡県議団の海外視察については、不明瞭な点が指摘されてきた。県議団には、税金を盗んでいるという意識が皆無なのである。

 2.政治資金の裏金づくりにおいても、国民の怒りは収まらない。とくに自民党安倍派による悪質な資金集めには、厳しい批判が殺到した。結果として、自民党は国民から激しい糾弾を受け、単独過半数政権から転落した。

 国民の怒りの根源は、議員たちが平然と脱税していた点にある。ケチというか、姑息な行為も目立つ。国会議員のスタッフ人件費をかすめ取るような行為も散見される。議員たちには、脱法行為をしているという自覚や悪意が、ほぼゼロなのである。

 3.最悪の犯罪は、教職員による行為である。女子生徒を盗撮し、その後、盗撮趣味の仲間同士で写真を見せ合っているという。これらの教職員は、性に対する認識が歪んだ精神症候群に陥っていると言わざるを得ない。

メンタル病者が続出する

 筆者が会社を訪問する際に、まず投げかける質問がある。「社員は平均何人に1人がメンタル疾患を患っていますか」と。多くの企業で共通する回答は「22人に1人」であった。

 症状が軽く、早期に復帰できれば幸いである。しかし、現実はそう簡単ではない。親しく付き合いのある会社の娘さんは、「拒食・過食」を繰り返し、5年におよぶ闘病生活を送った。現在は支障なく会社勤めができているが、これは珍しいハッピーな例である。

 弊社に4年間勤務していた、なかなか優秀な女性社員がいた。現在、5年近く自宅静養を続けている。その大半は「ベッド暮らし」と聞く。治療のため精神科クリニックを転々としているが、根本的な回復には至っていない。精神科医という職業は、実に多忙である。

“繁殖意欲”を失った生物は淘汰の運命

 まずAIに、今後の人口動態予測を尋ねた。

 2025年:総人口1億2,326万人/65歳以上3,653万人
 2040年:総人口1億1,284万人/65歳以上3,929万人
 2050年:総人口1億469万人/65歳以上3,888万人

 いよいよ53年あたりで、人口は1億人を割るであろう。おそらく、日本民族が出現して以降、自ら子孫拡大を拒否したのは初めてのことではないか。平穏な時間が持続すると、人類は「子孫の保存」という貴重な本能を忘れるのであろうか。

 「雄と雌が盛りつくこと」を忘却したならば、人間(狭義では日本人)という種は、この世から抹殺されるという天罰を受けることは間違いないであろう。

 「日本人ファースト」を自己宣伝する参政党は、「子づくり」政策を推進すべきであると提案する。子づくりに励み、家庭を支える使命感を全うできない者は、社会においても貴重な役割を担えないであろう。

AI化の加速は人類能力を劣化させる

 ウクライナ・ロシア戦争を見れば一目瞭然である。人間の軍隊同士が激突する戦争は、もはや過去の話となった。無人ドローン兵器が主役の時代である。要は、「AI」の判断によって戦争作戦が遂行されている。人間の判断を1万倍も上回る作戦構築能力をもつ。

 近い将来、ロボット軍隊が登場する。戦争領域において、人間の出番はなくなってしまう。

貧富の格差が決定づけられる未来

 これからはあらゆる分野で「AI判断」に基づく活動(生産活動)が主体となる。判断や結論をAIに委ねれば、人間の能力は必ず劣化する。これに追い打ちをかけるのが、産業ロボットの本格的な普及である。要するに、「人間の労働作業を置き換える」という大胆な展開が進むのである。「労働から解放された理想社会が実現した」と歓喜する人々は、まさに能天気な存在である。

 熟慮していただきたい。「どこから食い扶持を得るのか」。働かなければ、生活費は生活保護に頼るほかない。贅沢な収入など望むべくもない。「労働から解放された」と喜ぶ人々は、世の中の厳しさを理解していない。

 これからどのような時代が到来するのか。現在のアメリカにおける貧富の格差の、100倍以上にもなる身分格差社会が誕生するであろう。人口の0.1%が支配者となり、残り3%が支配層を支える。中間層は壊滅し、大半はかつての奴隷階級に近い生活を余儀なくされるであろう。

 「では、成功とはどのような道なのか」という自問自答が生まれる。

大谷翔平氏になれば良し

 答えは明快である。大谷翔平氏の後を追えばよい。「野球をやれ」と言っているのではない。大谷選手のように、「どの道であれ、負けない覚悟で物事を極めよ」という助言である。

 もちろん、第一人者となることは至難の業である。しかし、奴隷的立場から脱するためには不可欠であることも事実である。

 以上、未来の厳しさを示してきた。「80年間を安閑として過ごしてきた日本が、最も没落する可能性が高い」という現実を直視し、26年の新年を迎えていただきたい。

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