経営者の事業魂なくしては、日本再生は成し遂げられない(1人あたりGDP24位)
新春の年頭所感で「80年の平穏な歴史が日本を潰す」と提起した。そこへ、驚くべき、そして情けない経済データが飛び込んできた。「1人あたりGDP24位、スペインに抜かれる」と報道されたのである。「いかに円安とはいえ、こんな体たらくがあってよいのか」と、憤然としない経営者がいるだろうか。
経営者魂の弱体化
【例1】海外工場をめぐる歪み
海外に工場を建設して15年になる。代は3代目に移ったが、この経営者には、人の情を感じ取る感性がまるでない。海外事業の陣頭指揮を執ったことが一度もなく、現場に自ら足を運ぶこともほとんどない。それにもかかわらず、海外工場はかなりの収益を上げている。その儲けに目をつけた現地に派遣された幹部と現地スタッフが手を組み、事業の実態を盗み取ろうとする画策が始まったようである。
【例2】器量を欠く3代目社長
オーナーの娘と結婚した男が3代目社長に就いたが、この人物の器量が狭い。引き継いだ事業規模は大きいものの、古参の忠勤幹部たちをうまく使いこなせないでいる。すでに「メーカー系列に入るのではないか」といった噂も漏れ始めている。
【例3】「息子にはこの苦労をさせたくない」
3代目社長は手堅い経営を展開してきた。しかし、人材確保に長年頭を悩ませている。中小企業が人材を確保するのは至難の業であり、「息子にはこんな苦労をさせたくない」とこぼすのである。
事業魂、満々たる経営者たち
【例1】家族全員でロンドン開拓
natural naturalグループ(福岡市南区)の吉田登志夫氏は、異色の経営者である。1993年、夫婦で子どもたちをともないロンドンへ移り、オーガニックビジネスを学ぶために移住した。同氏は51年生まれの74歳。西南学院大学在学中には大学生協の学生理事として活動し、地域生協(現・グリーンコープ)設立運動に74年から参加。さらに82年にはパレスチナ現地支援活動にも従事した。
以降43年間、彼の人生は一貫して「理念とビジネスの両立」を追求する歩みであり、その姿勢に一切の迷いはない。生協活動を通じて吉田氏は「人の健康は何を食べるかによって決まる」という信念に至った。当時、オーガニックブームは訪れつつあったが、まだ本格的ではなかった。だからこそ、オーガニックの本場であるロンドン、イギリスに挑戦したのである。
ロンドンへ同行した4人の子どもたちは、その後どう成長したか。長男は東京とロンドンを拠点に国際弁護士として活躍している。次男はロンドンで事業の先導役を担っている。長女・次女もオーストラリア、アメリカで国際ビジネスに携わり、力を発揮している。吉田氏は、孫たちが世界のどの場所で活躍するのかを、楽しみながら見守っている。
【例2】娘婿2代目の意地
創業50周年を迎えた三共電気(株)(福岡市西区)の歩みには、創業者の精神と、時代に応じた変革の積み重ねがある。75年の創業以来、「お客様第一主義」を掲げて地場に根を張り、取引先1,000社超の電材卸総合商社へと成長した。福岡を拠点に、九州・沖縄へ営業網を広げている。
2代目の現社長・木原和英氏は、創業者の娘婿である。だからこそ「事業を発展させることこそが己の責務」という信条を自らに言い聞かせ、奮闘を続けてきた。その結果、年商100億円規模に王手をかけるところまで成長させた。
木原社長曰く、「創業者のような強いトップダウン型の指導力は自分にはないと自覚してきた。だからこそ現場主義へと経営を転換した。IT導入と働き方改革により、効率化と社員の自立性を両立させてきた。さらに、創業以来の『お客様第一主義』を徹底し、顧客満足度の向上に常に努めてきた。仕入れ先とも密に情報交換を行い、顧客の役に立てる体制づくりをしてきた」と語る。その気迫は、今もなお漲っている。
【例3】海外住宅ニーズに挑む
Ambitious Asia(株)(福岡市城南区)社長・中島久雄氏は、九州八重洲(株)(福岡市博多区)を率いて業績を大きく伸ばした実績を持つ人物だ。中島氏は戸建住宅の受注を数多く手がけ、社長時代にはフィリピンで住宅事業も展開した。この経験を踏まえ、Ambitious Asiaを立ち上げたのである。
中島社長は「大手ハウスメーカーの積水ハウス(株)、大和ハウス工業(株)などはアメリカ進出をはたし、日本での受注実績にもつなげている」と指摘する。そして、10年におよぶフィリピン住宅市場での経験を踏まえ、こう見通す。「フィリピンは、あと2年もすれば人口で日本を抜く。生活水準も高まるから住宅需要は間違いなく拡大する。現に、西日本鉄道(株)など日本企業が広大な土地を仕込んでいる。今が事業を行う絶好のチャンスだ」と力説する。
独立した中島氏は早速、地元企業とタイアップしてマニラ首都圏近郊・バタンガス州リパ市で347戸の大規模住宅造成に踏み切った。現在、毎月10戸ペースで引き渡しが進んでいる。
【例4】「水のゼオライト」、海外へ
水処理事業を展開するゼオライト(株)(福岡市博多区)が、ついに海外進出に乗り出した。すでに事業拠点を構える準備も完了している。嶋村謙志社長は語る。「この2年間を市場調査=リサーチ期間と位置づけてきた。調査を重ねるうちに、ターゲット市場を東南アジアと定め、拠点をベトナムに置くことにした。これからの2年間が、本格的に売上を上げる事業スタートの時期だと位置づけている」と、展開のステージが移行したことを説明する。
10%の事業魂に燃える経営者が、日本を救う
事業魂に燃える経営者4例を簡単に紹介した。年頭所感で「日本はこのままでは潰れる」と警鐘を鳴らした。しかし、この地獄絵図のような事態を食い止める道は、なお1つ残されている。日本の経営者のうち10%が、ここに挙げたような経営者たちと同じように事業魂を燃やせば、日本救済の可能性はまだ残っているのである。








