2024年11月25日( 月 )

「検察崩壊元年」ゴーンの反撃(1)

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 昨年末のカルロス・ゴーン氏(以下ゴーン)による日本脱出は日本国民を驚かせた。しかし、何よりも驚いたのは検察であることに間違いない。ゴーンの元には今後、日本のマスコミを初めとして世界のマスコミが取材に訪れることになる。今まで、日本のマスコミをリーク情報で自在に誘導していた検察は今後、ゴーンから発せられる情報を止めることもできなくなる。

 日本のマスコミが最もその隠蔽に加担させられたのは、刑事訴訟法学で「捜査の端緒」と呼ばれる捜査段階の犯罪発覚の具体的実相である。とくに本件では成立して間がない日本版司法取引が行われたことがわかっているが、その具体的内容はまったく闇のなかであった。

 従来から司法官憲、とくに、検察による違法捜査の温床となっていたのが、この「捜査の端緒」とされる部分での闇の司法取引であった。(有名な例として美濃加茂市長事件がある)。

 最も重大な場面でありながら、日本のマスコミは取引をした2名の共犯者への取材を一切行わなかった。仮に2名の共犯者の犯人性が真実であっても、これら2名はすでに刑事処分を免除されているのであるから、事件の真相は何も検察からの闇リークに頼ることなく直接共犯者らから取材するのが道理というものである。この点ですでに日本のマスコミは公正公平な客観報道の姿勢を欠いていた。

 レバノンにいるゴーンのもとに取材に訪れることができる日本の新聞社は、圧倒的なリーク情報で、洪水のようにゴーンの一方的な有罪情報を1週間にわってスクープ報道した朝日新聞以外の報道機関となることは自明である。国民は、今後の朝日新聞の報道姿勢を観察することによって、朝日新聞のスクープ報道の真実性を確認することになる。

 すでに法曹関係者とされる人々からさまざまな展開予想が語られているが、相変わらずの思惑見解で、どれ1つとして法的論理的なものがない。ゴーンの国外脱出は保釈条件違反であることは明白であるから、裁判所が保釈保証金を没収することができることは明白であるが、実際に没収するかどうかは当然不明である。それは保釈条件違反の内容・性質による。

 刑事裁判では被告が法廷に実在することは訴訟進行の必要条件ではない。それは検察官の起訴状と冒頭陳述に従って、基本的に物的証拠、とくに員面調書と検面調書を中心として犯罪構成要件事実の認定が行われるからである。

 とくに、第一の容疑事実である有価証券報告書重要事項虚偽記載罪の審理については、ゴーンの主張は一貫しており、会計学的に専門事項ばかりであるから本人に証言させる必要はまったくない。もちろん、裁判の進行によっては本人の証言を求める必要がある場合も発生するだろうが、その時点で、出廷が確保できていれば、保釈条件違反といってもそれは文字通り形式犯である。この時点で裁判所が保証金の没収の可否を判断するのが合理的であり、その意味で現時点での没収処分はないと考えられる。

(つづく)
【凡学 一生】

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