「社長が注目する経営者」はワークマンの小濱氏とアイリスオーヤマの大山氏(前)
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産業能率大学総合研究所は、年末恒例の調査「社長が選ぶ今年の社長」を発表した(有効回答490人)。2019年の1位に選ばれたのは、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長で12回の調査で4年連続の首位。3位のワークマン(群馬県伊勢崎市)の小濱英之社長と4位のアイリスオーヤマ(宮城県仙台市)の大山晃弘社長が初のベスト10入りした。
イノベーターとして評価
ワークマンの小濱社長は「トレンドを見る視点がすごい」「細かい商品戦略で、しっかり需要をつかまえている」、アイリスオーヤマの大山社長は「他企業シニア退職者の再雇用で業績を上げた」ことが評価された。
2人はイノベーターとして評価されたということだ。
ドイツ人の経済学者シュンペーターは、資本主義社会の動態を「イノベーション(革新)」の概念で描くなど、独創的な経済理論を展開した。彼は、「新結合」という言葉を使い、「革新」と「創造的破壊」を提唱。それを5つのタイプに分類した。
(1)新しい生産物の創出:新機軸の商品やサービスを開発すること。携帯電話市場を一変させたスマートフォン(スマホ)の登場をイメージすればわかりやすい。「創造的破壊」が起きた。
(2)新しい生産方法の導入:ユニクロやニトリなどが導入したSPA(企画から製造、小売まで一貫して行う方式)が典型例だ。
(3)新しい市場の開拓:中古住宅をリフォームし、新しい住宅につくり替える中古住宅市場の開拓は一例である。
(4)新しい供給源の開拓:電池メーカーは、ノーベル化学賞の吉野彰・旭化成名誉フェローが発明した電池材料を供給源にリチウムイオン電池を生み出した。
(5)新しい組織の実現:社内ベンチャーの立ち上げも組織イノベーションに挙げられる。日本では、イノベーションは「技術革新」と同意語として使われているが、必ずしもそうでもない。ワークマンの小濱社長のスポーツ衣料進出や、アイリスオーヤマの大山社長の家電進出も、イノベーションなのである。
ワークマン女子が好業績を下支え
ワークマンの株式市場での評価は高い。2019年の大納会(12月30日)のワークマンの株式時価総額は8,340億円で小売業7位。百貨店のJ・フロントリテイリング(4,139億円)、三越伊勢丹ホールディングス(3,896億円)、高島屋(2,182億円)を大きく上回り、小売業の成長株と見なされているということだ。
躍進の原動力になったのが「ワークマン女子」。一昔前には考えられなかった表現だが、作業服販売のワークマンは男性向けに限らず、日常使いを意識した女性向けの商品開発や店づくりを強化した。ワークマン本来の特徴である「機能性」と「低価格」に「かわいさ」をプラスした。その成果が出た。
ワークマンの19年8月の既存店売上高は前年同月比55%増と爆発的に伸びた。客数は34%、客単価は15%上昇した。8月は猛暑の影響で、空調ファン付き作業服など夏物商品が好調だった。空調ファン付き作業服はアウトドアやスポーツ観戦に着用できるカジュアルなデザインを増やしたことが販売増につながり、若い女性たちのお気に入りのファッションとなった。
ワークマンは、ショッピンググセンターのベイシア、ホームセンターのカインズ、コンビニのセーブオンなどを擁する群馬の流通チェーンベイシア(当時はいせや)グループに属する専門店。作業服コーナーだけが独立して、1980年に1号店がオープン。ワークマンの名が示す通り、働く人のための作業服や軍手、安全靴などを専門に売る作業服チェーンだ。
防寒性に優れたブルゾンやジャンパーを取りそろえ、なかでも驚くほど軽くて暖かいと評判のストレッチブルゾンが大ヒット商品となった。今や、北海道から沖縄まで全国860店(19年12月末時点)にまで拡大。「作業服のユニクロ」といわれるほどの大勢力となった。
(つづく)
【森村 和男】法人名
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