「社長が注目する経営者」はワークマンの小濱氏とアイリスオーヤマの大山氏(中)
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“中興の祖”は栗山清治・前社長
作業服からスポーツ、アウトドア系の衣料、男性中心から女性をターゲットにしたカジュアル業態への転換は、栗山清治社長(当時)の決断だ。京都府立大学文学部卒。シノヤという会社を経て、85年にワークマンに転職。商品開発を担当し、リーマン・ショックの翌09年、社長に就任した。
18年2月22日放送のテレビ東京『カンブリア宮殿』に栗山氏が出演し、ワークマンの成長の秘訣について語った。それによると、減り続ける労働人口に危機感を募らせた栗山氏は、プライベートブランド(PB)を立ち上げ、アウトドアやカジュアルの市場に舵を切った。作業服専門のオーナーたちからは、「本当に売れるのか」といった疑問の声や反発が相次いだ。しかし、低価格を売りとするPB商品が売れたことから反発は収まった。
18年9月5日、東京都立川市のショッピングセンター(SC)「ららぽーと立川飛」に新型店「ワークマンプラス」1号店をオープンした。作業服を中心に扱う既存店と異なり、スポーツやアウトドア系の衣料を専門に扱う。アウトドアブランドの店舗も出店しているが、新型店の中心価格帯は1,900~2,900円と安く、価格面で差異化した。
ワークマンの株主はべイシアの創業家一族が大半を保有している。資本と経営が分離した形態だ。栗山氏は19年4月、取締役に退き、6月の株主総会で取締役も退任した。
カジュアル業態「ワークマンプラス」の出店を拡大するのを機に、経営の若返りを図る。栗山氏は、PB商品の強化で8期連続の増収増益を達成するなど同社の成長を指揮。”中興の祖”と呼ばれている。
新社長に託された新業態店「ワークマンプラス」
栗山氏から社長を引き継いだのは小濱英之氏。小濱氏は高崎商科短大を卒業後、90年にワークマンに入社し、商品部長などを歴任した生え抜き。19年4~9月期の実績で、PB商品は947アイテムとなり、チェーン全店売上高構成比の44%を占める。路面店の開業やSC内への出店や既存店の改装を進め、20年3月末までにワークマンプラスを169店まで増やす計画を掲げ、PB商品の構成は5割強に高める。
19年10月からの消費増税で、慎重な見方をとる小売業界のなかで、ワークマンは強気だ。既存店の売上高は2ケタ増を続ける。20年3月期は、売上高は前期比10%増の733億円、純利益は11%増の108億円を見込んでいる。
スポーツ・アウトドア衣料は大手が競う大激戦区だ。「ワークマン女子」に頼った業態転換で、ワークマンは小売業の”勝ち組”であり続けることができるのか。腕の見せどころだ。
アイリスオーヤマは総合家電に大変身中
アイリスオーヤマの大山晃弘社長は「日の丸家電復権」へ攻勢をかける。米国や中国のネット通販向けに事業を拡大し、2022年にグループ売上高1兆円を目指す。非上場を維持し、本社は仙台から移さない。
これまでは炊飯器など白物家電を手がけてきたが、白物だけでは目標を達成することが難しいと判断。液晶テレビを起爆剤としてAV機器(音響・映像)も手がける総合家電メーカーへと脱皮する。アイリスの液晶テレビはシャープやパナソニックなど電機大手から転職してきた技術者が開発し、中国メーカーに生産を委託する。
アイリスは、創業時にはプラスチック収納容器やペット用品が主力製品だったが、近年は発光ダイオード(LED)照明が収益源となっていた。いまや、大型テレビやエアコン、洗濯機など家電製品が中心である。
目をつけているのが世界最大の電子商取引(EC)市場の中国だ。中国では洗濯機や冷蔵庫といった大型家電までネットで売れる。かつて世界の市場を席捲した日本の白物家電は、中国や韓国などの低価格商品に市場を奪われた。中国のネット通販市場の変化で、そこに復活の兆しを見た。中国に10カ所の生産拠点を設け、中国のネット通販に対応する。
その重責を担うのが、18年7月に社長に就いた大山晃弘氏。創業者、大山健太郎氏の長男で97年に東北学院高校を卒業。米国のベロイト大に留学したが中退。03年にアイリス米国法人に入り、海外畑を歩いた。10年にアイリス本体に戻り、開発部長を経て15年からはアイリス取締役に就き、持株会社オーヤマの代表を父から譲り受けた。健太郎氏は会長だ。
(つづく)
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