創業100年企業の遠忠食品 「三方よし」の精神が長寿企業の秘訣(4)
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遠忠食品(株)代表取締役 宮島 一晃 氏
東京の食料自給率は1%以下
日本の食料自給率は37%(2019年農林水産省統計)で、食料の63%を外国から輸入している。しかし、「食料を輸入している国の多くは発展途上国だ。そして、多くの発展途上国では人口が増加している。このまま途上国の人口が増え続ければ、いずれ自国の食料消費を優先するようになるだろう。そうするとほかの国に輸出できる量が減り、将来は日本としては輸入しにくくなる可能性もある。だから、日本の食料自給率を上げることが必要だ」と宮島氏は話す。さらに、東京の食料自給率、つまり都内でつくられている食品は1%未満ともいわれている。
今の現状を前向きに変えたいと考え、2016年に宮島氏は「メイドイン東京の会」を立ち上げた。「メイドイン東京の会」では、年3回、東京でつくられた食品の販売会や交流会、農産物や水産物の産地見学会、食品工場の見学会などを開催している。
また、「遠忠商店」の店舗では東京都でつくられた砂糖や麦茶などの食品を陳列し、「東京でつくられた食品の良さをもっと多くの人にも知ってもらいたい。東京の地場産業を活発にする手助けができれば」と宮島氏はいう。東京原産の千住葱を使ったせんべいや都内で栽培した小麦粉など、思いがけない食品もあって、ラインナップは幅広い。なかには、「メイドイン東京の会」がメーカーと共同開発した商品もある。宮島氏の地域を大切にしたいという思いが伝わってくる。
食べものは人が生きていくうえで欠かせないものだ。そのため、宮島氏は「農業や漁業はもちろん、食べものをつくって世の中に提供する仕組みを良いかたちで次の世代につなげていかないと大変なことになる。敗戦して75年近く経つが、平気でものを捨てる国になりつつあることに危機感を感じている。もっとエスカレートすると日本だけでなく地球にも大きな負担がかかってしまうため、『ものを大切にする』流れを取り戻せるように動くことが必要だ。ものを捨てたり、無駄にすることは一見すると便利かもしれないが、本当にそれでいいのだろうか。日本を、子孫がご飯を食べるのに困る国にはしたくない。食品廃棄も社会問題になっているが、いつも、もったいないと感じている。自社の店舗では賞味期限が近くなると価格を下げる、商品は1点単位で仕入れるなどの方法でできるだけロスがないように工夫しており、売れ残りの廃棄はほぼゼロになるようにしている」という。
自社の経営にとどまらず、世の中のあり方まで見通す、宮島氏の視野は広い。
(了)
【石井 ゆかり】<COMPANY INFORMATION>
代 表:宮島 一晃
所在地:東京都中央区日本橋蛎殻町1-30-10
設 立:1948年3月
資本金:1,000万円
売 上:(19年/12月期)2億2,000万円関連記事
2024年11月29日 14:302024年11月28日 12:102024年11月20日 12:302024年11月27日 11:302024年11月26日 15:302024年11月22日 15:302024年11月18日 18:02
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