2024年09月01日( 日 )

【続】カルロス・ゴーンの記者会見が意味するもの

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 カルロス・ゴーンが8日に行った記者会見は、これまで謎に包まれていた部分についてゴーンが直接意見を表明する場だったので、日本のメディアもその視点で報道してもらいたいものである。

1:ゴーンの強烈なカウンターパンチ

 日本の記者が、「法律違反を犯して国外逃亡していながら、日本の司法制度を不正義と批判することは説得力に欠けるのではないか」という趣旨の質問をした。それに対するゴーンの答えの一つは、「私は確かに一個の法律違反をした。しかし、以前からここに具体的に示しているように検察の10個の法律違反を指摘したが、日本のマスコミはどうして私だけを批判するのか」と反論した。検察の10個の違法行為の内、捜査情報の悪意のリークを取り上げれば、それは公務員の守秘義務違反と重ねて、検察官が収集した情報・証拠を裁判外で勝手に第三者に開示するものであるから、刑事訴訟法にも違反する極めて重大な犯罪である。

 そのリーク情報を違法と知ってマスコミの記者は受領するのだから、まさに共犯である。つまり、質問者の記者自体が検察と共犯で法律違反をしているのだから、ゴーンに上記質問の資格はないと反論された。無論、質問の記者はそれ以上の発言はできなかった。

 ゴーンが犯した密出国罪は出国審査を懈怠して出国した行政手続違反の形式犯である。

 かつて北朝鮮工作員らが自由に日本に密入出国して多数の日本人を拉致した拉致事件でさえ、密入出国を繰り返したことについて、日本政府は重大な国家主権の侵害だとして、捜査に全力を入れたことがあったか。拉致事件は実際に多数の日本人が、その人権生命身体の侵害を受けた重大犯罪事件である。そのような事件であっても、密入出国違反については所詮、形式犯のため、まともな捜査をした事実はない。昨今では「瀨取り」犯罪が密入出国罪を伴った犯罪である。漁船が領海内から公海にでても、直ちに密出国罪とはならない。犯罪目的でその手段として密出国した場合に同罪が成立する。

 ゴーンにいかなる犯罪目的があったというのか。

2:残酷司法

 ゴーンが国外脱出して自由の身になり、記者会見をひらくことになった直前、キャロル夫人に偽証罪容疑の逮捕状が発布された。記者会見場で夫人の横に座った日本人記者が、この逮捕状の発布について感想を求めたところ、「日本の司法は残酷よ」と答えたという。

 確かに「人質司法」は冤罪の手段を指称するもので、冤罪の結果、人生の大部分を牢獄で過ごさざるをえなかった無辜の人にとっては残酷以外の何物でもない。

 ゴーン一家は既に多くの名声や財産を失った。しかも、まだ日本の官憲の追及には終わりがない。ゴーン事件で検察は人質司法には失敗したが、苛斂誅求はまだ続き、ゴーン一家に安息の日はない。キャロル夫人の言葉はこれらを一言で現したものである。

 人質司法の結果が残酷司法であるから、国民は、日本の司法は「残酷司法」と世界の人々に理解されていることを知らなければならない。

【凡学 一生】

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