【徹底検証】東京地検・次席検事による「ゴーン記者会見」へのコメント(前)
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東京地検次席検事による1月9日のコメントについて
はじめに
以下に解説するコメントは、日本の検察官のなかでも優秀とされる人物の論文である。当該論文がいかに独善で、かつ、不都合な部分を故意に隠蔽したものであるかを指摘し、当該論文が法匪による詭弁であることを論証したい。
斎藤隆博次席検事のコメント(以下斉藤論文)の要旨
(1)国外逃亡が犯罪であること
(2)ゴーンの130日間の逮捕拘留および妻らとの接見禁止保釈条件はゴーンに高度の逃亡のおそれがあったことが理由であり、それは現に今回の脱走で証明された。また、妻自身がゴーンの犯罪行為の関係者であるとともに、その妻を通じて罪証隠滅の行為を行ってきたことが理由である。
(3)上記のような自分の犯罪行為を度外視して一方的に日本の刑事司法制度を非難することは不当である。
(4)検察は適正に犯罪の端緒を得て適正に捜査を進め訴追した。
(5)検察は捜査により有罪の証拠を収集し公訴を提起した。犯罪が存在しなければ起訴に耐えうる証拠を収集できるはずがない。
(6)日産と検察により仕組まれた訴追であるとの主張は不合理であり、まったく事実に反する。
(7)検察は主張やそれに沿う証拠開示を行ってきた。
(8)ゴーンは法を無視し、処罰をうけることを嫌い国外逃亡した。
(9)検察はゴーンに日本で裁判をうけさせるよう可能な限りの手段を講じる。
リトマス試験紙
斎藤論文が適正妥当なものであるかを判断するリトマス試験紙となるのは、ⅰ「ゴーンの主張」やⅱ「客観的に問題となっている法律問題・論理問題」であり、これらとの比較対照で、斎藤論文を検討することになる。
ゴーンの主張(上記番号に対応して記述する)
(1)について、密出国罪については違法行為を犯したと認めている。ただ、この形式犯に比べ、検察が犯してきた具体的な10の犯罪について、ゴーンは主張してきたが、検察はもちろん、裁判所も日本のマスコミもこれを無視してきた。これは不当である、と主張している。
ゴーンは会見で、検察の犯罪行為の1つとして、日本メディアへの一方的な悪意に満ちた膨大な量のリーク情報の提供を法律違反(守秘義務違反)として主張した。
確かに、ゴーンの姉がブラジルの日産所有建物の管理人として年間1,000万円の報酬を受けていた事実を確たる証拠もなく、「私物化」と非難する情報をマスコミに流したことは、ゴーンのみならず、ゴーンの親族に対する名誉毀損の犯罪行為となる。誰であれ、管理業務、管理行為の実態が存在しなければ、それは不当な利益となるが、管理行為がない、という点については、せいぜい少数の得たいのしれない人物の伝聞証言しかない。誰かが管理すべき建物であれば、管理費の出費は当然で、「私物化」と即断はできない筈である。
(2)について、拘留中には自白を強く求め続けられた。無実であるから自白もできず、自白の強要のための長期拘留は人質司法として違法である。
(4)、(6)について、本件司法取引は陰謀である。
(7)について、証拠開示について検察が抵抗するからいまだに公判期日が決まらない。
(8)について、処罰をうけることを嫌って国外脱出したとはどこにも言っていない。公正公平な裁判を希求して、その第一歩として不当な拘束から脱出した旨を主張した。
法律的・論理的問題
ゴーンが日本の刑事司法制度の不正義を公正に世間・世界に訴えるためには保釈条件に違反して15億円の保証金を没収され、その他の不利益(再収監)の危険も犯し、かつ、密出国罪の犯罪者となることを覚悟で密出国したことは明らかで、この動機と行動が、以後、ゴーンのすべての主張が不当の原因理由根拠となることはない。A罪を犯した人間はB罪以下の犯罪について弁解抗弁の資格はない、とする論理は犯罪を人格で裁くもので、近代刑事法理論に根本的に違背する。
以上の理由で斎藤論文の(1)(3)(8)は不当な主張である。
「長期拘留は逃亡のおそれが理由であり、それが今回正しかったことがゴーンの逃亡によって証明された」という論理について
逃亡の恐れを理由として長期拘禁を認める場合、その「おそれ」の存在は長期拘留の開始前に存在し、かつ証明されていなければならない。結果としてゴーンの逃亡が発生したが、予言者や神ではあるまいし、誰もゴーンの逃亡を長期拘留の前に予想できたものはおらず、ゴーン自身もまさか長期に不当に拘留されることなど夢にも思っていなかった筈である。
つまり、ゴーンの逃亡について、不当違法な長期拘禁が原因理由の1つであり、長期拘留を正当化する理由や証明にはなり得ない。事象の時系列を無視した、「あとづけ」ないし「こじつけ」である。言い換えれば、検察は「予言」で長期拘留を正当化し、「予言」どおりに事象は発生した、と主張している。ゴーンはこの検察の「予言」を批判したのである。現代社会では「予言」が合理的なものかどうかさえ議論しない。
以上の理由で、斎藤論文の(2)の前半部分の主張は失当である。
「妻自身がゴーンの犯罪行為の関係者であるとともに、その妻を通じて罪証隠滅の行為を行ってきた」という主張について
検察官は単なる自分の主張にすぎないものを公然と世間に発表した。まだ検察は裁判所にゴーンの犯罪を立証するための証拠を提出開示しておらず、その抵抗により、公判期日がすでに逮捕拘留後の公訴提起から1年以上も経っていながら決まっていない、それどころか、さらに来年の春に延期されるとの打診さえされている状況にある。このような状況を鑑みるなら、斎藤論文の有罪断定主張は極めて重大なゴーンや妻の人権侵害となることは明白である。このような刑事司法の実態が、ゴーンの主張する日本刑事司法の不正義である。
以上により斎藤論文の(2)の後半の主張も失当である。
現在、本件事件の司法取引の実態は完全に闇のなかにある。それはゴーン弁護団の司法取引にかかる証拠開示の請求に対し、検察が抵抗し、裁判所も同調しており、これが、公判期日を決めれない理由である。従って、斎藤論文の(4)の主張はまったく事実に反する。
(つづく)
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