【検証】「ゴーン国外脱出」~日本人には理解されない密出国罪の本当の意味
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密出国罪の犯罪構成要件は「出国審査をうけないで、国外に出たこと」である。国民は通常、密出国は何らかの犯罪遂行の手段や、その前提過程であるため、あたかも、ゴーンが何らかの犯罪行為を行ったものとして扱っている。
つまり、ゴーンが起訴されている犯罪が、裁判所で有罪判決がくだされる前にすでに国民が有罪判決をしてしまっている。しかも、その有罪判決による投獄から脱走したかのごとき「逃亡罪」の非難まで加えている。
だから、「卑劣」とか「汚い」とか「盗人猛々しい」との表現が飛び交っている。洒落たウィットで有名な落語家MCも盛んにゴーンの国外脱出に怒りを覚えて発言している。しかし、ゴーンの国外脱出に怒りを覚える国民は二種類いる。一種はゴーンを有罪視する「八っつあん熊さん」たちであり、もう一種は逆に検察官や裁判官に対して怒っている。派手に逮捕しておきながら、いまだに公判を開かないのは何事だ。本当に犯罪の証拠はあったのか、不都合なことを隠しているのか、と。
犯罪には通常、動機がある。従って、通常の刑事裁判では動機も探索され、一緒に非難される。しかし時には「動機には汲むべき事情がある」として、量刑の軽減事由となることもある。動機は犯罪構成要件ではなく、探索されてもそれ自体は裁かれない。
ゴーンの密出国罪という無審査出国の動機は何だったのか。有罪が必至だったので科刑を逃れるために無審査出国をしたというのが、いつの間にか定説となってしまっている。これを明確に主張しているのが、なんと検察である。検察は、まだ犯罪の立証をしていない。それどころか証拠の開示に抵抗している。それでいてゴーンが科刑逃れのために脱走した、と吹聴している。
国民はこの検察の明らかな違法行為(犯罪事実の証明がないのにゴーンを犯罪者と称するもので、明かに名誉棄損の犯罪)にはまったく気付いていない。それどころか付和雷同している。マスコミもゴーンが法を犯してまで出国した真の理由を突き止めようともしない。このような状況を世界の人々は冷静に見ているのである。だから、世界のどこからもゴーンが科刑逃れのために脱走したという非難が起こらないのである。日本のマスコミはゴーンの脱走についての各国の「反応」を報道するが、一番大事な事実は何かということすらわからないでいる。
密出国罪は何の目的で出国したのか、という目的との関係で見なければ、ただの手続違反であり、現に国民はしっかり、その目的に注目し、批判している。しかし、その理解する目的が完全に「操作され」「誘導された」「嘘の情報で洗脳された」理解であるところが問題である。物事を多面的に観察する、という自然科学・認識科学の基本が日本人にはまったくできていない。実に残念である。
最近、ジャーナリストによる驚くべきコメントがあった。ゴーンは「無法集団の手助け」で日本を「脱獄」したと主張するものである(平野太鳳 文春オンライン2020/01/12)。
先に検察・警察がゴーンの密出国を手助けした者らを密出国罪幇助の疑いで捜査をしているとの報道も散見されていたので、これらの記事を読んだ人は、完全にゴーンの密出国罪に共犯者(幇助犯)がいると誤解錯覚させられてしまった。確かに秘かに出国を手助けしたグループは存在するが、彼らはまったく日本の法を犯していない。
何度もいうように密出国罪は出国審査を受けないことが違法行為の中核であり、それは日本語の文面で明らかなように「不作為」を処罰するものである。ゴーンの出国行為を助勢・手助けしても共犯としての幇助罪にはならない。出国審査は本人しかできないから、本人以外の者が、「出国審査を受けない」という行為(不作為)を手助けしようがない。
現在、ゴーンは不法者集団に高額費用を払って手助けされ、「密出国罪を犯した」と日本国民から非難されている。どうも「密出国罪」という呼称が誤解の元のようである。
正確には入国管理法違反罪であり、細かくいえば、出国審査手続不履行という不作為犯罪である。第三者が幇助しようのない本人の不作為が処罰の対象である。すぐに逮捕状を請求する検察が一向に請求しないのも、さすがに裁判官も不作為犯の幇助犯となる犯罪行為を観念することはできないから逮捕状を発布することもない。
念の為にいえば、入国管理法の条文には「不法に」という「開かれた構成要件」は存在しない。似たような犯罪類型である住居侵入罪には当然のように「不法に」という構成要件が付くことによって、「侵入行為」が可罰的な場合だけを処罰する。これは刑罰法規と行政管理法規の本質的差異である。入管法は刑罰法規ではなく、形式的な違反行為を違反として処罰する。これを刑罰法規として検察は利用するから、勝手な拡大解釈が生まれる。
本来は不法な目的で入出国すること自体を犯罪構成要件とした不法入出国罪と、純然たる行政管理行為である入出国管理とを分別しておけば、上記のような混同は起こらない。
法治国家として、刑罰法体系と行政管理法体系を区別した精密な法体系であったなら、本件事件はゴーンの出国には不法目的が存在しないから、単なる行政手続違反として処分されるだけである。ゴーンの出国目的が「違法だ、犯罪だ」とするのは騙されて誤解した国民が勝手につけた難癖にすぎない。
実は行政管理・統制法令と刑罰法令では、その立法目的と対象が根本的に異なるため、検察が得意になって刑事司法で濫用してはならない重大な事例が、本件の有価証券報告書重要事項虚偽記載罪である。国民はまったく本質が同じ「検察による冤罪」を見ていることになる。
【凡学 一生】
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