ソフトパワー戦争に突入したアメリカとイラン 日本は仲介役をはたせるのか?(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
物議を醸してきたトランプ大統領の言動
そんなトランプ大統領を「精神鑑定にかけるべき」との声がアメリカの医師たちから緊急提言として出されている。アメリカ議会に対して、「早急な精神鑑定を行う必要がある」という声明を発表。「大統領としての職務を遂行するにはあまりにも言動に一貫性がなく、精神不安定の兆候が明らかだ」というのが、その理由だ。
とくに、医師たちが注目したのはホワイトハウスで行ったイラン危機に対する国民向けの演説である。事前に用意された原稿を読んだのだが、発音がうまくできず、途中で何度も鼻をふんふん言わすなど、異常さが目立った。専門家によれば、こうした症状は「心理的、精神的に危険で、仕事を遂行するうえで深刻な問題を引き起こす可能性が高い」。
実は、アメリカ軍の幹部は毎年、定期的に心理テストを受けることが義務付けられている。しかし、軍の最高司令官である大統領にはそうした心理テストを受けることが求められていない。国家の命運を左右する立場にある人間が精神に異常を来しているとの可能性が指摘されている。
すでに800人を超える医師たちがトランプ大統領は精神鑑定の必要があるとの緊急提言に同意し、署名している。このまま放置すれば、国益を損なうばかりか、アメリカを危険な事態に追い込むことが懸念されるというから恐ろしい。こうした医師や専門家による緊急提言は繰り返し行われてきたが、すべて無視されてきた。今回はイラン問題が引き金となったが、これまでも北朝鮮問題や地球温暖化問題などに関する言動で、物議を醸してきたトランプ大統領である。
しかも、イラン危機の最中の1月9日、オハイオ州での支持者を前にした演説で、突然、「自分はノーベル平和賞に値する。昨年、自分が世界を救ったのだ。なぜ、自分にノーベル平和賞が来なかったのだ。おかしいじゃないか!ノーベル平和賞を受賞した男(エチオピアのアーメド首相)は自分の国を良くしようとしただけ。俺は世界を核戦争の脅威から救った。どっちが偉い?!」と絶叫した。トランプ大統領は北朝鮮の金正恩委員長との間で核合意が得られたことがノーベル平和賞に値すると確信し、いまだに根にもっているようだ。しかし、北朝鮮は相変わらずミサイル発射実験を繰り返し、核開発を放棄した確証はないままである。幻想に取りつかれているとしか思えない。
本人は「悪名は無名に勝る」と平然と受け流し、逆に「強いリーダーシップを有権者に訴えることになる」と気にしないようだが、周りから見ると、異常な言動の主としか思えない。側近と言われてきた人物も次々とトランプ大統領の元を去っている。側で仕えれば仕えるほど異常さに嫌気がさすのかもしれない。
また、フロリダの別荘マー・ラーゴで仕える身の回りのお世話係も次々にクビにされている。クビにされた理由を聞くと、「ほとんど空になったシャンプーや石鹸の容器を捨てたため」「大好物のチーズバーガーに欠かせないダイエット・コークに挿したプラスチックのストローに触った」という他愛のないものばかり。しかし、トランプ大統領本人にとっては極めて重要なことらしい。何しろ、捨てていい容器は浴室の床に置いたものに限る。大事なストローに自分以外の人が触った場合には絶対にその場で廃棄する。トランプ氏の異常な潔癖性を象徴している。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。関連キーワード
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