循環取引はIT業界の商慣習なり!~今度は東芝子会社など5社が架空取引(前)
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循環取引――。複数の企業間で、実際に商品を動かさずに帳簿や伝票上だけで売買が行われたことを装う取引をいう。ソフトウエアやシステムといったかたちのない商品を扱うIT業界での商慣行となっている。今回、東芝子会社の東芝ITサービスなど5社で循環取引が発覚した。
ネットワンシステムズが循環取引を主導
東芝は1月18日、IT(情報技術)サービスを手がける連結子会社の東芝ITサービスが、製品やサービスのやりとりが存在せず、資金のみが循環する循環取引があったと発表した。2019年4~9月期に計上した売上高約200億円は、4~12月期決算で取り消す。
東芝ITサービスで見つかった架空取引では、5社が循環取引に関わっていた。東芝ITサービスのほか、東証一部上場のネットワンシステムズ、東証一部上場の日本製鉄の子会社日鉄ソリューションズ、富士電機の子会社富士電機ITソリューション、みずほフィナンシャルグループのみずほリースの子会社みずほ東芝リースの5社。みずほ東芝はリース会社で、ほかの4社はシステム開発会社だ
ネットワンの担当マネージャーが販売先や価格を調整する架空取引を差配していた。
朝日新聞(1月24日付朝刊)は、循環取引の構図をこう報じた。
”確認された架空取引の1巡目は、ネットワン→東芝IT→日鉄ソリューションズ→ネットワンの順に機器を販売する契約と、ネットワン→東芝IT→富士電機IT→日鉄ソリューションズ→ネットワンの順に機器を販売する契約の2つルートとなっていた。
架空取引の2巡目の方も、ネットワン→東芝IT→みずほ東芝→日鉄ソリューションズ→ネットワンの順に機器を販売する契約と、ネットワン→富士電機IT→日鉄ソリューションズ→ネットワークの順に機器を販売する契約の2つのルートになっていた”
朝日新聞(1月24日付朝刊)
富士電機は1月30日、連結子会社の富士電機ソリューションが絡む架空取引で、総額242億円を売上高として計上していたと明らかにした。取引期間は15年3月から19年10まで取引件数は38件。すでに発注を解除した4件を加えると総額は289億円にのぼる。
IT商慣行が循環取引の温床に
循環取引とは、商品を実際に動かさずに、資金と伝票だけが複数の取引先との間をめぐったようにして、最終的に最初の販売先に戻る取引のことだ。業界用語では「Uターン取引」とか「グルグル取引」「まわし」とも呼ばれている。
スルー取引とは、介入取引や口座貸しのこと。自分が受けた注文をそのまま他社に回すことで、業界用語では「丸投げ」という。
循環取引は営業努力せずに売上高が水増しできるというメリットがある。しかし、数%ずつ手数料を上乗せした金額で買い戻さなければならないので損失が膨らんでいき、循環の輪は必ず破綻する。破綻すれば、今度は損失の連鎖が広がるのが常だ。
循環取引は売上を達成する最も簡単な方法
循環取引がIT業界に広まったのには、それなりの理由がある。IT業界では、ソフトウエアの開発を複数の企業が請け負う同業者間の取引が多い。開発には長期を要する商品を、納品する前に伝票だけを動かして、開発費の負担を軽減する取引が日常的に行われている。
そこに営業マン同士が談合して、伝票による入出金を行うスルー取引が行われる素地が生まれる。こうして循環取引の輪が形成される。
営業マンがスルー取引に走るのは、極端な売上高インセンティブ制をとっているからである。トップの実績を上げた営業マンはボーナスが上乗せされ、ノルマを達成できなかった営業マンは自発的な退職に追い込むべく、窓際に追いやられる。
営業マンはノルマを達成するために、何が何でも売上をつくろうとする。スルー取引に加わるのは、売上を達成する最も簡単な方法だからである。こういうやり方を身につけた営業マンが各社に分散して、スルー取引、循環取引のネットワークが形成されていった。
(つづく)
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