アベノミクスがもたらす「資本栄えて民滅ぶ」国の未来(2)
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経済学者・評論家 植草 一秀 氏
第2次安倍内閣が発足して丸7年の時間が経過した。企業利益は倍増し、株価は3倍水準に上昇し、メディアがアベノミクス成功とはやし立てるが民の竈の火は燃え尽きる寸前だ。2019年の出生者数は初めて90万人を下回った。民を温める政策に転じなければ日本崩壊は近未来の現実になる。若者が未来に夢と希望をもてない国に、夢と希望の未来は到来しない。
不況に転落した日本経済
今回の消費税増税に際しても、増税の影響は軽微であるとのキャンペーンが展開されたが、事実ではなかった。1997年、2014年の消費税増税時に同様のキャンペーンが展開されたが、現実にはいずれのケースでも消費税増税にともなう景気後退が発生した。
景気動向指数を見ると日本経済の浮き沈みが手に取るようにわかる。政府は公式には2008年2月から2009年3月、2012年3月から同年11月の2つの期間しか景気後退を認定していないが、2014年3月から2016年5月までの期間も景気後退に陥ったことが鮮明である。
これが前回の消費税率5%から8%への引き上げ時の景気後退である。安倍内閣はこの景気後退を隠蔽し、景気回復が2012年11月から現在まで持続していると喧伝してきた。その拡大期間はいざなぎ景気を超え、いざなみ景気を超えて史上最長になったとアピールしてきた。
しかし、発生した消費税増税不況を存在しなかったものとして初めて成り立つ景気拡大であり「いかさま景気」と呼ぶべきものだ。今回の消費税増税後の10月景気動向指数が発表され、一致指数が前月比5.6ポイント低下して94.8になった。2013年2月以来の低水準を記録した。
景気動向指数は日本経済が新たな景気後退局面に突入したことを示している。同指数の落ち込みは2014年増税時よりもはるかに傾斜が急になっている。消費に対して10%の懲罰税が発動され、個人は不要不急のモノ以外は一切消費をしないとの行動に踏み出している。
4半期ごとに発表されるGDP統計では2018年10-12月期から2019年7-9月期まで四半期連続でプラス成長が発表されている。これを根拠に安倍内閣は日本経済が好調であると主張するが、各種統計の改ざんにまで手を染めている安倍内閣下の経済統計で、GDP統計ですら信ぴょう性が低下している。
各四半期の実質GDP成長率(前期比年率)の単純平均値を算出すると、第2位次安倍内閣発足後の実績はプラス1.3%である。これは民主党政権時代のプラス1.7%を大きく下回る。民主党政権時代に東日本大震災や福島原発事故が発生し、日本経済は超低迷を続けた。第2次安倍内閣発足後の実質GDP成長率平均値は、このときよりもはるかに悪い。成績評点でいえば、民主党政権の評点がギリギリの「可」で、安倍内閣の評点には「不可」しかつけられない。
日経平均株価がバブルのピークを付けた1989年12月29日から丸30年の時間が流れた。日経平均株価は第2次安倍内閣発足時から3倍の水準に上昇したが、それでもバブルのピークよりも4割低い水準に位置している。バブル崩壊後の日本経済30年間は超低迷の時代であったが、経済成長率に関する限り、そのなかでも安倍内閣下の日本経済のパフォーマンスが突出して悪い。
(つづく)
<プロフィール>
植草 一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、スタンフォード大学フェロー、早稲田大学教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、オールジャパン平和と共生運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続している。経済金融情勢分析を継続するとともに、共生社会実現のための『ガーベラ革命』市民連帯運動、評論活動を展開。政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。関連記事
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