集客増加策は、マーケターの出番!~吉野家は伊東氏、丸亀製麺は森岡氏に任せた(後)
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マーケターと呼ばれるマーケティングのプロといえば、資生堂を再生させた魚谷雅彦氏、日本マクドナルドで辣腕を振るった原田泳幸氏、スシローを回転ずし業界トップに押し上げた水留浩一氏が有名。今回は外食産業で、集客を回復させた2人のマーケターを取り上げる。吉野家の伊東正明氏と、丸亀製麺の森岡毅氏である。
沖縄でテーマパークを立ち上げる
森岡氏に、西武鉄道から声がかかった。西武園ゆうえんちに、かつての賑わいを取り戻したい。沿線人口が減る見通しのなか、所沢駅周辺や球場の再開発との相乗効果で集客力を高めてほしいという依頼だ。どうやって魅力を高め、入場者の回復につなげるか。最先端の技術を取り入れる施設とは逆に、「昭和レトロ風」にリニューアルして再生させることにした。すご腕マーケター、森岡毅氏の腕の見せどころだ。
18年8月、刀は沖縄県でテーマパーク事業の展開に向けた準備会社「ジャパンエンターテイメント」(那覇市)を立ち上げた。オリオンビール(浦添市)、リウボウ(那覇市)の地元業者と近鉄グループホールディングス、JTBなど県内外の9社が参画した。
刀は20年1月30日、大和証券グループ本社と資本業務提携すると発表した。刀は大和証券G本社から140億円を調達。第1弾として、刀が沖縄県で計画するテーマパークの準備会社に30億円を投資する。
都内で記者会見した森岡氏は「沖縄に建てるプロトタイプ(原型)のテーマパークを成功させ、(需要が見込める)世界の何100カ所とあるエリアに展開させたい。世界中でしっかりと中長期で(ライセンス料)を稼げる日本発の構造をつくりたい」と話し、USJ時代に断念したテーマパーク構想を進める意義を強調した。USJを去る際、「これだけはやりたかった」と吐露したのが沖縄進出だ。
「沖縄はハワイを超えるポテンシャルがある」。沖縄の青い海など美しい自然を観光資源にする戦略でパークをつくれば、日本のみならず中国や台湾などアジアから多くの観光客を呼び寄せることができる。森岡氏の沖縄テーマパーク構想だ。マーケターとしてテーマパークを一から立ち上げたいという悲願に一歩近づいた。
マーケティング不在の「いきなり!ステーキ」
ペッパーフードサービスが運営する「いきなり!ステーキ」が失速した。
立ち食いスタイルが受けて2018年春先までは好調が続いていた「いきなり!ステーキ」だが、18年4月から既存店売上は100%を割り込んだ。既存店の数字が月を追うごとに悪化。19年10月はとうとう、売上、客数とも4割以上の減少だ。外食企業の月次売上で、これほどの落ち込んだ数字を見たことがない。
ペッパーフーズは勢いに乗り、「いきなり!ステーキ」1000店を目指しFC店を拡大した。FC店は、いずれも郊外の路面店だ。その結果、1つの商圏で複数出店するケースが続出。客を奪い合う深刻なカニバリーゼーション(自社競合)が起きて、店の集客力が落ちた。
車で来店する客が大半の郊外店では、店同士の間隔を広く取らなければ、商圏が重なり、自社競合が起きる。チェーン展開する企業の出店戦略の基本であるが、ペッパーフーズは、店を増やすことだけに目を奪われ、1つの商圏に1つの店という基本ルールは頭のなかになかったようだ。
一瀬邦夫社長は、メディアとのインタビューで「お客さまの取り合いを避けるために店同士をしっかり離さなければならないことがわかりました」と語っているが、出店戦略のイロハをご存知なかったとは、信じられない話だ。
マーケティング不在だと悲惨な結果になるという悪しき事例である。
(了)
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