2024年11月19日( 火 )

検察の闇? 不正放置の日本郵政と東芝に 検察OBが続々と天下り!(3)

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検察OBを擁護する調査報告書

 実際のところ、委員3人全員が検察OBの日本郵政グループの特別調査委員会、検察OBが委員長を務めた東芝の第三者委員会はそれぞれ、どのような調査を行っていたのか。

 まず、日本郵政グループの特別調査委員会。かんぽ生命の不正販売問題を調査した同委員会は19年12月18日付で計155ページの調査報告書を作成している。報告書では、グループの役職員その他の関係者合計649人にヒアリングを実施するなどした結果として、保険の不適切募集を行うことが正当化される風潮が形成されていたことや、販売実績の上がらない保険募集人に対して上司のパワハラが横行していたことなどが詳細に報告されている。

 だが一方で、報告書では、経営陣の責任には一切言及がない。その点については、

 〈当委員会の役割として、本契約問題に係る役職員等の責任の有無などを明らかにすることは含まれておらず、本報告書ではこの点について言及していない〉(4ページ)。

 と説明されているが、要するに「経営陣の責任」の有無などについては、依頼主である日本郵政グループが明らかにされることを望んでいないから調べなかった、というわけだ。これでは、社外の弁護士たちが第三者的立場から日本郵政グループの不正を調べる意義も減じている。

 さらに特筆すべきは、報告書がかんぽ生命の社外取締役には何の落ち度もなかったことをわざわざ記述していることだ。次のように。

 〈2018年秋から乗換契約に係る問題について、当局から指導を受けている情報が、社外取締役には、取締役会などにおいて、適時には開示されなかった。また、2019年5月28日付けで当局から本件報告徴求を受けた後も、詳細な説明がなされないまま、同年6月下旬になって、報道により問題が拡大してから、社外取締役の要請に基づき、臨時取締役会が同年7月18日に開催され、そこに至って初めて、社外取締役にも、本契約問題の事実経過などが開示された。かんぽ生命では、多種多様なバックグランドを有する外部人材を取締役として登用しているにもかかわらず、少なくとも緊急時における情報開示の在り方には問題があり、その結果、本契約問題の早期収束に向けた対応が困難となったと言わざるを得ない〉(130ページ)。

 かんぽ生命の不正販売問題の発覚時、社外取締役には元大阪高検検事長の弁護士・尾崎道明氏が名を連ねていた。この事実に着目すれば、検察OBのみで構成された特別調査委員会が、自分たちと同じ検察OBである尾崎氏を擁護しているようにも受け取れる。

 一方、東芝の第三者委員会は同社の粉飾決算を調査した結果として15年7月20日付で計299ページの調査報告書を作成している。報告書は、東芝で巨額の粉飾決算が繰り返された事情として、「経営トップの関与を含めた組織的な関与」があったと認定。さらに、経営陣が当期利益至上主義であり、「目標必達」のために部下たちに厳しいプレッシャーを課していたことや、上司の意向に逆らうことができない企業風土だったことなどから粉飾決算が常態化したことも厳しく指摘している。

 だが一方で、この報告書には、次のような驚く記述もある。

 〈本委員会の調査および調査の結果は、東芝からの委嘱を受けて、東芝のためだけに行われたものである。このため、本委員会の調査の結果は、第三者に依拠されることを予定しておらず、いかなる意味においても、本委員会は第三者に対して責任を負わない〉(19ページ)。

 「第三者委員会」という名称の委員会であるにもかかわらず、調査は依頼主である東芝のためだけに行ったものなので、株主や債権者などの利害関係者を含む「第三者」に対しては何の責任も負わないと臆面もなく言い切っているわけだ。

 さらに同報告書には、次のような記述もある。

 〈本委員会は、調査の過程において東芝との間で合意確認された調査対象以外の事象に関する情報を入手した場合においては、速やかに東芝に伝達し、対応の要否につき確認を促すこととした。本委員会においては、東芝と合意した委嘱事項以外の事項については、本報告書に記載しているものを除き、いかなる調査も確認も行っていない〉(19ページ)。

 つまり、第三者委員会は調査を進めるなか、新たな情報が見つかる都度、調べを進める必要があるか否かを東芝に確認し、その意向に全面的に従っていたわけだ。これでは、第三者委員会が独自に東芝の会計不正を見つけながら放置した可能性も否めない。

(つづく)
【ジャーナリスト/片岡 健】

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