藤井聡氏がPB凍結による消費税・コロナ対策を主張~自民・若手勉強会
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自民党の議員連盟「日本の未来を考える勉強会」(会長・安藤裕衆院議員)は5日、国会議員会館内で藤井聡・京都大学教授を講師に勉強会を開き、プライマリーバランス(PB)を凍結した国債発行により、消費税増税やコロナウイルスによる経済の打撃を克服する方策を聞いた。同議連の会員を中心とした党内有志は来週、首相官邸などに緊急提言を予定する。
勉強会には、国会議員21人が参加した。冒頭、安藤氏が「昨年10月、消費増税で弱っているところにコロナショックがやってきた。日本経済が本当に落ち込んでしまうが、踏ん張って立ち直ることができるかの瀬戸際。今日は藤井先生に、日本経済の現状とこれから採るべき政策課題についてお話をいただきたい」とあいさつした。
演題は「消費税ショックとコロナショックが導く『令和恐慌』の危機〜全品目・軽減税率10%を早急に実現せよ!」。予定では題中の数字を「5%」にしていた。藤井氏は「消費税システムそのものを凍結して令和恐慌を乗り切っていかなければと思うに至り、改題した」と明かした。
自身がかねて訴えてきた国土強靱(きょうじん)化に絡め、「何かリスクがあって(経済が)どんと下がっても、いち早く戻るのが強靱性。リーマン・ショックから日本はなかなか戻れなかったが、当の米国では政治が機能してオバマ大統領が大型経済対策を打ち、すぐに戻った。経済の仕組みだけでなく、政治決断が入れば強靱だ。日本の政治が試されている」と喚起した。
小売部門の販売額は3.8%減で、1997年と2014年の2回の消費増税時よりさらに悪化。卸売では8.0%減で、過去2回の4〜5倍の落ち込み。この理由について、「2018年後半から輸出が減っているなかで内需を冷え込ませたから」と分析する。
2019年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)−6.3%(年率)について「下方修正されると言われてるが、もっと恐ろしいのは名目も冷えてること」と指摘。名目GDPは−4.9%に悪化した。過去2回は同様に実質GDPは落ち込んだが、名目は下がっていない。藤井氏は「消費増税前に100万円使っていた人は増税後も100万円使っていた。今回は95万円しか使わないようになった」と説明した。
実質賃金について安倍内閣下ですでに6.4ポイント下落していることに加え、消費税の10%への引き上げによる影響を挙げ、「8%下がることは確定している。そこにコロナショックとデフレスパイラルによる下落があり、1割くらい下がる。日本を貧困化させた」と断じた。
政府が2月の月例経済報告で「景気は緩やかに回復している」と発表したことに触れ、「これは虚偽答弁だと思う。犯罪に近い。政府と国会は三権分立で独立している。しっかりとご批判・分析いただきたい」と呼び掛けた。
新型肺炎をめぐる政府の誤りとして、安倍首相による春節の中国人の日本訪問奨励と、「イベント等の中止・延期要請」に客観的基準を示さないことを挙げた。小規模の飲食店まで客足が遠のいたが、感染リスクは500人集まっても0.5%である現状を指摘。「客観的リスク量と人間の反応は比例しない。典型的な過剰評価」と批判した。
実質GDPはすでに東日本大震災の−5.5%を上回り、コロナショックと五輪不況が重なるとして、「リーマン・ショックより大きい。リーマン・ショックは1回だが、消費税は今年も来年も、ずっとだから」と説明した。
こうした「令和恐慌」への対策として、財源はすべて国債を使うことを主張。「PBを無視するという政治判断が一番重要」と強調した。そのうえで、(1)消費税の5%あるいは10%の全品目への軽減税率適用(2)コロナ対策(3)20兆円規模の経済対策を訴えた。
(3)は所得・休業補償と、無利子・無担保の特別融資を含む徹底的な失業・倒産対策。しかし、政府の経済対策は予備費からの153億円にとどまる。GDPの0.003%で、香港の4.22%、韓国の0.79%と比べてもケタ違いに低い。
藤井氏は「日本は今、国際機関から名指しで『汚染国家だ』と言われている。財務省に気をつかいすぎ。もっと政治家が政治判断で、『これだけやるんや』といえばできる」と鼓舞した。
さらに、消費税10%を維持した場合と5%に減税した場合の向こう15年間の税収予測を提示。「消費税5%という小銭を稼ぐために30兆円という巨額の富を政府は失い続けようとしている。ここで申し上げたことをやることが、今は赤字を増やすように見えるが、将来の税収を抜本的に拡大する」と強調した。
意見交換は非公開で行われたが、安藤氏によれば「今、大変な状況にあるというのは共通の認識で、まさに国難。大規模な経済対策を打たないと、日本は沈没していくだろう」と語った。そのうえで、来週、PB凍結と消費税減税、コロナショックを受けての経済対策を柱とした提言書を首相官邸と同党幹部に提出する考えを示した。
安藤氏は経済対策の規模について、「20兆円くらい。所得補償は青天井で出すくらいのアナウンスが必要。1〜3月期に所得が落ちる分はきちんと政府が肩代わりするという安心感をもってもらうことが一番大事」と強調した。
「日本の未来を考える勉強会」は当選1〜3回の若手で構成。2017年に発足し、40回以上勉強会を重ねてきた。これまで評論家の中野剛志氏やクレディセゾン主任研究員の島倉原(しまくら・はじめ)氏らを講師に招き、貨幣論や積極財政論などを学んだ。2018年の西日本豪雨の後には国債を財源にした国土強靱(きょうじん)化「投資」、2019年11月には補正予算や次年度本予算に関してPB黒字化の延期や軽減税率の上乗せなどの提言を行っている。
<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)
1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』関連記事
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