シリーズ・コロナ革命(14)~支離滅裂内閣に独裁権限与える支離滅裂「植草一秀の『知られざる真実』」
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安倍内閣の迷走が止まらない。安倍内閣は中国、韓国からの入国規制を発表した。背景に中国の習近平国家主席の来日延期決定がある。安倍内閣の行動には論理整合性がない。ちぐはぐ、支離滅裂である。
当初、安倍内閣は何もしなかった。中国のコロナウイルス感染拡大が伝えられても何もしなかった。ところが、ダイヤモンドプリンセスの乗客に感染者が存在したことが公表されると「水際対策」を打ち出した。このクルーズ船の入港を拒否すればよかったとの主張があるが失当である。
クルーズ船の帰港を拒絶する正当な事由が存在しない。そもそもこの船は横浜港から出港しているのだ。そのダイヤモンドプリンセスは2月1日に沖縄・那覇港に寄港している。この段階で日本入国のための検疫と入国手続きが完了している。ダイヤモンドプリンセスの航路にもよるが、那覇港寄港後は内国船扱いだったのではないか。
香港で下船した乗客の感染が明らかにされ、政府は実施済みの検疫を取り消して再度の検疫を行ったのである。乗員・乗客3,711人を船内に長期間監禁する措置が取られ、この結果、船内での爆発的感染拡大が発生し、現時点までに6人の死者が生じた。当初のPCR検査を3,711人の乗員・乗客のなかの273人にしか実施しなかったことが惨事を拡大させた。
安倍内閣は「水際対策」を示しながら、中国からの入国を湖北省、浙江省以外制限しなかった。春節の休暇で多数の中国人が訪日したが、その際にコロナウイルスが国内に持ち込まれた疑いは極めて高い。その他、韓国、イタリア、イランからの入国も制限しなかった。まさに「ざる」の水際対策が続いてきたのだ。
中国の習近平国家主席の来日が4月に予定されていた。ところが、習近平主席の来日が延期になった。この発表後に中国、韓国からの入国規制が決定された。今さら入国規制しても効果は限定的だ。
「専門家会議」が「これから1、2週間が感染拡大か収束かの瀬戸際」と発表したのが2月24日。3月9日でその1、2週間が終わる。この「瀬戸際」の2週間の最後になって入国規制を強化するという決定なのだ。
安倍内閣は「瀬戸際」を叫びながら、3月1日の東京マラソン開催を容認した。このイベントで7万人の濃厚接触が創出された。「瀬戸際」だからと全国の小中高の一斉休校、各種イベントの自粛を要請する一方での東京マラソン開催容認は論理的整合性を欠く。これは支離滅裂という。
安倍首相は2月29日の記者会見で「かかりつけ医など、身近にいるお医者さんが必要と考える場合には、すべての患者の皆さまがPCR検査を受けることができる十分な検査能力を確保いたします。」と述べた。これは「やるやる詐欺」だ。
3月6日からPCR検査が保険適用になったが、PCR検査を発注できるのは、どこにあるのかがわからない844の「帰国者・接触者外来」だけ。2月1日から3月1日までの1カ月間に、この「帰国者・接触者外来」での診断を認められた患者は、1機関あたり、たったの2.6人だ。
1カ月間で2.6人しか診断を認められていない。そして、「帰国者・接触者外来」は「入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のためのPCR検査」(2月25日「基本方針」)
を基準にPCR検査を行っている。歯科を除く医療施設は2019年末時点で11万934。このなかの844の医療機関でしかPCR検査を発注させない。しかも、診断を許可されるのは「帰国者・接触者相談センター」に相談して同センターが「帰国者・接触者外来」での受診を認めた者だけだ。
安倍内閣がPCR検査抑制に全力を挙げて取り組んでいることがよくわかる。目的は公表される感染者数の抑制。感染を阻止するのでなく、感染の確認を阻止している。これに勝る矛盾はない。
安倍内閣はコロナウイルス対策を大義名分にして「非常事態宣言」の発令権と同宣言を発令した場合の独裁権限を獲得しようとしている。あろうことか、野党の一部がこれに協力する姿勢を示している。
これを「ショック・ドクトリン」と呼ぶ。危機的状況を利用して、安倍内閣が独裁権限を獲得しようとしているのだ。憲法改定に緊急事態条項を盛り込む策略とも連動する。既存の法体系のなかで対応すればよいのであって、政府に独裁権限を付与することは民主主義国家の根幹を損なう暴挙である。
安倍内閣の対応は支離滅裂を絵に描いたようなもの。論理的整合性が存在しない。「瀬戸際」の強硬政策を唱えながら、東京マラソン開催を容認する政府なのだ。このような支離滅裂内閣に独裁権限を与えることは国家にとっての自死行為である。
PCR検査の判断を全国の医療施設医師に委ねるべきだ。スイスのロシュ社が提供する機材などを活用すれば、多数の検査実施も容易に実現する。
「専門家会議」と表現するから誤解が生じるが、この会議の本質を踏まえるなら、会議名称は「利権者会議」になる。メガファーマ(巨大製薬企業)が提供する機材を活用すれば、大量のPCR検査を実施できる。これを阻止する理由は、確認感染者数の抑制と検査利権の独占だ。専門家会議にメガファーマの関係者を含めるべきだ。
安倍内閣が実行している本当の「水際対策」は、PCR検査を水際で遮断することである。検査が広範に行われれば、韓国のように感染者数が急増する。この事態を回避することが東京五輪開催を強行したい安倍内閣の最優先課題になっている。
加藤勝信厚労相は国民の生命と健康のために仕事をしているのではなく、安倍首相から命じられた確認感染者数の抑制=PCR検査妨害のために仕事をしている。
しかし、口実が必要だから、「感染者と非感染者が待合室で同室になることをさけるため」と繰り返している。3月6日からPCR検査が保険適用になるが、窓口での本人負担分が公費負担になる。検査を受けるのにお金がかからないので良いことだと感じる人が多いかもしれない。しかし、安倍内閣が何もなしに金を出すわけがない。「公費で本人負担を肩代わりするのだから、安易に検査を受けさせるわけにはいかない」とするのだ。
検査数を抑制するために窓口負担を公費負担とするくらいなら、窓口負担は通常通りにして、広範に検査が実施される体制に移行させるべきだ。
PCR検査を受けることができる入口は限りなく狭い。全国11万の医療施設のなかの844の「帰国者・接触者外来」での受診を「帰国者・接触者相談センター」で許可された者だけが許される。極めて「狭き門」だ。
すべては、感染確認者数を抑制するためのもの。従って、日本国内での感染状況を判断するに際して、この方式で判明する感染者数の推移を使用することは適切でない。公表感染者数自体が「操作された計数」だからである。
3月9日で「瀬戸際の1、2週間」が満了になる。しかし、事態は悪化しつつあり、「瀬戸際の1、2週間」の結果は悪いシナリオに沿うものと判断できる。この現実に即して実行される対応の第一弾が中国・韓国からの入国規制ということになる。経済活動はこれから危機的状況に突入することになる。
こんな支離滅裂内閣に独裁権を与えることはテロリストに大量破壊兵器を提供するようなもの。こんな立法に費やす時間があるなら、それに代えて内閣を刷新する方がはるかに得られるものが大きい。
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