相談受けない長崎県児童相談所の惨状
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佐世保高1同級生殺害事件
佐世保高一同級生殺害事件に関する長崎県の調査・検証のなかで、児童相談所の信用が問われる事態になった。10月29日の長崎県議会文教厚生委員会で報告された同事件に関する調査報告のなかで、佐世保こども・女性・障害者支援センター(児童相談所)の職場で、幹部職員から、「相談を受けるな」といった発言が日常的に発せられていたという実態が明らかになった。
今回、問題になったのは、逮捕された少女を事件前に診察した精神科医に対する児童相談所の対応だ。精神科医は6月10日、「このまま放置すれば誰かを殺すのではないかと心配している。本児の行動に網をかけるという意味で要対協(要保護児童地域対策協議会 ※)で支援することができないか」などと電話で相談した。受けた職員は、「要対協で支援するケースとは思えない」「医療が優先するケースではないか」などと助言。「関係機関からの問い合わせ」として電話口頭受理で事務処理し、翌11日までに所長決裁が終了した。その後、追跡調査や精神科医への少女の状況確認などの対応は一切とられていない。
精神科医の電話について、電話で報告を受けた出張中の担当課長が、「医師からの丸投げを受けるな」との発言をしていたという。この課長が、9月24日、部下へのパワハラで文書訓告の厳重注意を受けていたことも合わせて報じられ、あたかも特定職員の問題が影響したかのように思えた。県が10月27日に行った児童相談所職員へ聞き取り調査では、「市役所は機能していないから言っても駄目」「どうして相談を受けるのか、押し返せ」といった課長の発言を日常的に耳にしたことがある職員は複数名いたことが判明。県は、精神科医の電話があった当日、この課長が不在で、所長まで情報を共有して組織として判断されたとして、課長の問題の影響を否定している。
しかし、日常的に同様の文言が指導として発せられていたとなれば、その影響は否めないはずだ。また、佐世保高一同級生殺害事件に限らず、その他の相談についても適正に処理されていたかどうか、疑問が生じる。当然、この種の発言を職場で許していたことへの監督責任も問われる。相談を極力受けないようにすることが組織体質化していたのではないか。問題の課長は、事件発生後、「対応しろというなら専門的にできるよう体制を整えてもらわないとできない」との趣旨の発言をしていたという。
決裁された電話口頭受理用紙に記された精神科医が伝えた少女の情報を見る限り、児童相談所の組織判断には大きな疑問符がつく。現在、わかる範囲の内容は以下の通り。
・県北地域の高校に通う一年生女児(15歳)
・小6時、理科室で盗んだハイターをスポイトで給食に混入。対象者は不特定で(被害に遭うのは)誰でもよかったとのこと。警察は介入せず
・今年3月に、朝方寝ていた父の頭部をバットで叩き殺害しようとする。父は事件化せず、階段から落ちたことにしていた
・父は本児のみ一人暮らしをさせている
・現在、本児は登校せず、自室に篭もり小動物の殺害を続け、猫を解体するなどしている文教厚生委員会では、委員からこれらの情報に対し、相談案件としなかったことについて、「児童相談所は何のためにあるのか」「どのような内容なら相談として受けるのか」といった疑問の声があがった。また、情報は、電話口頭受理を決裁した所長ほか課長2名、係長2名が回覧しており、児童相談所自体の認識も非難された。一方、これらの情報を元に、精神科医に聞かずとも、問題の少女を特定することはできなかったかとの問いに対し、県側は「各機関に問い合わせれば、特定できた可能性は高い」と答えた。
精神科医は、県のヒアリングへの回答のなかで相談を寄せた動機について、「児童相談所や警察などと守秘義務を越えて共有することで問題の拡大や発生の防止を図るための連携を果たせないかと考えた」としており、「対応できないと告げられたから匿名のままとせざるを得なかった」との認識を示している。
【山下 康太】
※要保護児童地域対策協議会:虐待児や非行児童を含む支援・保護が必要な児童、その保護者などの早期発見や適切な保護などを図るために、自治体、学校、教育委員会、警察などの地域の関係機関が関連情報を共有し、連携・協力により適切な支援を行うために設置された機関。
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