2024年11月22日( 金 )

作業服のカジュアル化が大ヒット~成長加速へ繰り出す次の一手(中)

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(株)ワークマン

 「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」の成功で業績拡大が続く作業服専門店チェーン、(株)ワークマン。既存の「WORKMAN(ワークマン)」がプロの職人を主な顧客とするのに対して、カジュアル化を打ち出したワークマンプラスは一般消費者を取り込み、売上を押し上げている。2020年3月期業績は売上、利益とも当初予想から大きく上振れする見通しだ。好業績は当面続きそうだが、ライバルからの挑戦も受ける。ワークマンプラス化を加速する同社の次の一手は何か。

PBブランド投入で一般客の取り込みに成功

 ワークマンプラスを展開するに至ったのは理由がある。

 ワークマンの主要顧客といえば、建設現場などで働く職人だ。だが、職人数は減少傾向にあり、それにともない作業服の市場も先細りする見通しだ。ワークマンは国内の作業服専門店最大手で断トツのシェアを誇るが、そもそも作業服という限られたマーケットで、成長も見込めないとなれば、新たな打ち手が必要となる。
 そこで、プロの職人だけでなく一般消費者を取り込む――客層を拡大し対象マーケットを広げようという戦略に出た。一般消費者を取り込めるのではないかと考えるようになったきっかけがPBのヒットである。

 ワークマンは10年ほど前からPBを開発してきた。そのPBの一部が、口コミやSNSで広がり、一般客が購入するケースが増えていた。典型例がレインスーツだ。レインスーツの本来の用途はもちろん、雨天時の屋外作業用の防水・防寒なのだが、これがバイク乗車時にライダーが着用するのに適しているという評判がSNS上で広がった。プロ向けに開発された商品だが、それとは異なる用途に使う一般客がいることがわかったのである。

 一般客の購入が広がるのを受けて、PBをカジュアル化し、用途別にアウトドアウエア「フィールドコア」、スポーツウエア「ファインドアウト」、レインスーツ「イージス」という3ブランドを立ち上げた。その後も人気は続き、3ブランドの売上が年々拡大していった。手ごたえを感じたワークマンは、これら3ブランドを打ち出した店舗を開発した。それがワークマンプラスなのである。

「安さ」と「機能」でマーケット開拓に成功

 PBの売りの1つは安さである。アウトドアやスポーツの有名ブランドと比べると、アウトドアウエアでは半値以下、スポーツウエアとなると3分の1以下という安さだ。

 アウトドアウエアで想定する顧客はビギナーだ。登山・トレッキング用ウエアを有名ブランドでそろえようとすると数万円かかるのに対して、ワークマンのアウトドアウエアなら一通りそろえてもその3分の1程度でおさめることもでき、ビギナーとしては手を出しやすい。とくに近年は、アウトドアウエアやスポーツウエアを街着として使う、いわゆるアスレジャーの用途も広がっており、そのトライアルとしても求めやすい価格だ。

 安さを実現するのは、大量生産による原価低減だ。作業衣料品店業界で断トツの店舗数・売上高を誇るだけに規模の効果は大きい。生産量が増えれば、仕入原価を抑えられる。加えてEDLP(エブリデイ・ロー・プライス)の価格政策もある。特売を打って、一定期間だけ価格を引き下げて集客を図るハイ・ローという価格政策とは対照的に、EDLPは文字通り毎日、いつも低価格で販売する。これにより、価格への信頼感を高めるとともに、特売のチラシ費用や準備作業コストを削減し、安さの原資とするのである。

 アパレル業界では、シーズン終盤にセールを段階的に打ち、値下げして商品を売り切っていく。値下げすると利益幅が小さくなるため、商品投入時の価格設定の段階でそのぶんを補えるように高めにしておく。つまり、原価率を低く設定しておくのである。これに対して、ワークマンはEDLPで基本的に値下げをしない。そのため、利幅を厚めに設定する必要がなく、原価率を高くすることができる。常に低価格で販売することが可能となるのである。  ワークマンの原価率は64%。これだけの原価率を出せるライバルはなかなかいない。コスト競争力がワークマンの強みの1つとなっている。

ストレッチ、防風、軽量、保湿など高機能を売りにする

 もう1つの売りは機能性だ。ワークマンはPB開発で、主要顧客である職人のさまざまな要求を満たす機能を盛り込んできた。耐久性、防寒性、防風性、遮熱性、通気性、吸汗性、透湿性、速乾性、ストレッチ性、耐水性、抗菌性などの機能を高め、それを強く打ち出してきた。安さはもちろん、こうしたさまざまな機能を取り入れていかなければ、職人から継続的に購入してもらえないからだ。主要3ブランドはカジュアル化したとはいえ、機能性へのこだわりはそのまま残されている。

 ワークマンによると、高機能・低価格はカジュアル衣料の空白マーケット。そこにターゲットを定めることで需要獲得に成功したのである。

(つづく)

【本城 優作】


<COMPANY INFORMATION>
代表者:小濱 英之
所在地:東京都台東区東上野4-8-1
設 立:1982年8月
資本金:16億2,271万8,300円(19/3)
売上高:930億3,900万円(チェーン全店/19/3)

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