2024年11月23日( 土 )

新型コロナウイルスの鉄道事業への影響~西日本鉄道、JR九州が従業員の一時帰休へ

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 西日本鉄道は5月、アルバイトを含め全部門の全従業員4,600人を対象として一時帰休を行うことを検討していると発表した。政府の外出自粛要請もあって、同社の鉄道、路線バスは平日で利用者数が約6割減少しており、同社は需要減に基づいて減便を進めている。一時休業は全国の大手私鉄で初となる。

 また、JR九州も一部従業員の一時帰休を検討している。規模、時期などは明らかにしていない。同社の4月1日~20日の切符、定期券など売上高「運輸取り扱い収入」(速報値)は74.3%減(前年同期比)となっている。JR各社ではJR北海道が5月からの一時帰休を決めている。

 各社とも、乗車率の減少を確認したうえでの便数の減少措置、それにともなう従業員の一時帰休という判断を行っているのであろう。そもそも鉄道、バスのようなライフラインのサービスは、利用者数が減るからといって、容易に便数を減らすことは行いにくく、また、便数を減らせば、その分各列車、車輛の人口密度が高まることになり、不特定多数からの感染リスクは減らないという批判を浴びる可能性もあった。それを踏まえたうえでの各社の経営判断である。便数の減少は利便性の減少をもたらし、乗客数はさらに減っていくかもしれないが、これは政府が求める外出減少という考えにも沿っており、感染予防という社会的要請に応じるために鉄道会社としても致し方ない。

 ただ、乗客数の減少、列車の減便の繰り返しというスパイラルが展開されていく可能性も否定できない。また、新型コロナウイルスの感染が終息するころには、人々の働き方が変わっており、リモートワークを選ぶ会社、従業員は間違いなく増えているはずであり、出勤手段としての鉄道、バスの利用者数は元には戻らないかもしれない。鉄道会社はもともと人口減少による鉄道需要の長期的な減少は織り込み済みであったはずであり、また古くから事業の多角化を進めていたが、新型コロナウイルスは鉄道事業以外のホテル、レジャーなど、ほとんどの事業に大きな影響をおよぼしている。

【茅野 雅弘】

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