商業手形割引一筋! ぶれない経営者~入江倉庫創業者・入江善重郎氏
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融通手形に巻き込まれた悪夢の1984年の夏
昔々、1970年から85年にかけて福岡における町金融業者=手形割引業者の中核部隊を【五社会】と呼んでいた時期があった。重松商事、日栄倉庫、山重、大博商事、入江倉庫の5社、場合によって、この5社に福商が加えられたこともあった。この五社会に追いつき追い越そうとしたのが後発の平尾商事、美龍商事などだ。そういう意味では手形割引業業界は乱立、競争激化で活気があったのである。
80年を境に超金融緩和時代に突入していた。銀行は手形割引枠を無条件に拡大していた背景があった。その頂点に悪夢が襲った。84年7月から8月にかけて、融通手形の乱発で30社におよぶ中小企業の連鎖倒産が発生した。信じられない話であるが、福岡銀行、西日本銀行など、それぞれ同行の博多駅前支店、博多駅東支店で融通手形を割り引いていたのである。40年を超える情報マン生活のなかで一番、スリルを味わった時であった。
この中小企業の融通手形連鎖倒産の渦中で福岡の金融業者も莫大な被害を浴びた。業容拡大を図っていた平尾商事がまず84年8月に事業停止の事態に陥った。続いて10月には美龍商事が行き詰った。この会社のオーナーの死亡を県警は殺人事件として捜査したこともあった。【五社会】を追いつき追い越せと激走していた2社はあえなく倒産したが、【五社会】のメンバーのなかにも打撃を受けたところが続出したのである。
業界には再割という用語がある。平尾商事、美龍商事という金融業者が集めた手形を割り引いてくれる同業者を【再割業者】と呼ぶ。再割枠は業者信用、手形銘柄次第である。この84年の悪夢とは事業欲丸出しで、融通手形を無制限に割り引いて焦げ付いたことだ。この再割業者たちのなかにも連鎖して廃業したものもいた。
84年の暑い夏、このスリリングな取材を入江倉庫の創業者・入江善重郎氏に度々行った。「コダマさん!!欲を掻いたら絶対いかん。あの融手の銘柄の手形がたくさん持ち込まれてきた。しかし、調べると、あやしい情報を掴んだので、すべてお断りした」というコメントを耳にした。本当に慎重な選択をされていた。同氏は常々の座右の銘として「手形の真偽を見抜く能力を失えば廃業あるのみ」と語ってくれたものだ。
商業手形一本で生きる
この暑い84年の夏の融通手形連鎖倒産劇のなかで入江倉庫も多少、不渡り手形を掴んだ。だがそれは付き合いのある同業者からの再割分ですべて回収した。この倒産劇に直面して深刻に悩んだのは「これで中小企業の手形が信用を失くせば手形割引という商売が成立しないのではないか」ということであった。結果は杞憂に終わったが、84年を境に同業者の方々が経営の方向転換を始めだした。
現実的なところでは不動産収入に活路を見出す業者である。日栄倉庫は【不動産収入50%、金融事業収入50%】を目指すようになった。重松商事はゴルフ会員権売買・ホテル経営に活路を見いだす挑戦を行った。サラ金=小口融資で店舗展開を拡大した業者は日本の上位にまで成長した例もあったのだが、いわゆるグレーゾーン金利の規制で事業を手放す事態に陥った。そうした同業者の栄光盛衰を垣間見つつ入江氏は60年間、手形割引一筋で貫いてきた。昭和4年5月17日生まれ、86歳となった入江善重郎氏は、息子・善一郎氏にバトンタッチを行ったのである。
<COMPANY INFORMATION>
入江倉庫(株)
代 表:入江 善一郎
所在地:福岡市博多区奈良屋町10-22
設 立:1956年4月
資本金:4,999万円
TEL:0120-039-105
URL:http://www.iriesoko.co.jp/関連記事
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