2024年11月23日( 土 )

シリーズ「ホテル淘汰」(6)~緊急事態宣言全域解除「アフターコロナ後」の観光地・観光ホテルに求められる新基準(ニュー・ノーマル)

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 政府は5月25日、東京など首都圏の1都3県と北海道の緊急事態解除宣言を行った。しかし、新型コロナウイルスの収束を宣言したものではなく、今後、よりいっそう感染拡大予防への取り組みが求められる。

 コロナ騒動のなか、日田市日田温泉地区(隈町エリア)の三隈川の川沿いにある、「山水館」を運営する(株)リバーサイドホテル山水が5月15日、大分地裁日田支部に破産手続きの開始を申請した。屋形船での鵜飼ショーなどが人気の「山水館」の最盛期は2000年ごろで年間の売上高は3億円を超えていた。
 しかし、その後は景気低迷の影響で、売上が減少を続けるなか、何とか日田温泉地区(隈町エリア)の「観光の灯」を消したくないと運営の持続に奔走していたものの、新型コロナウイルスの感染拡大による外出・移動の自粛を受け、来館者が激減。緊急事態宣言解除後も客足が戻る予測はたたず。破産申請の道を選んだ。

日田隈町エリア

 同じ、日田温泉地区(隈町エリア)の別の「観光ホテル」に取材を行った。取材に対し、「現在、隈町エリアのほとんどのホテル・旅館は5月末日まで臨時休業を行っている」との事。「緊急事態宣言が解除されたとしても、6月以降の予約はほとんどない。また、しばらくは大分県内のお客さまに対し、地元観光協会が県に対し、割引クーポンの発行などの助成を求めていく方策を模索している。世論の動きにあわせて積極的な集客活動は控えるべき、との意見が観光協会加盟のホテル・旅館では大半を占めている。また、もともと隈町エリアは福岡県からの団体客が多く、インバウンド減少による影響は20%にもみたない」と答えた。

 場所を変え、由布院温泉で取材を行った。由布院温泉は大分県下の多数の温泉街とは一線をかくした「まちづくり」で国内屈指の温泉街として、全国的に有名な温泉街だ。

 昭和の高度成長期、日田市、別府市の温泉街には、豪華絢爛な「観光ホテル」が立ち並んでいた。当時は「温泉がわけば、蔵が立つ」という時代だった。半世紀前までは全国的にも無名だった、由布院温泉を現在の人気温泉地へと牽引してきたのが「由布院玉の湯」の溝口薫平氏、「亀の井別荘」の中谷健太郎氏、「山のホテル夢想円」志手康二氏の3人。「ゆふいん音楽祭」「湯布院映画祭」などを始めたのも彼らだ。

由布院駅前

 志手氏はおしまれつつも51歳の若さで他界したが、溝口氏、中谷氏は現在も「長期滞在型、別荘的な存在として由布院温泉を訪れてほしい」とコロナ終息後の由布院のビジョンを明確に描いているようだ。

 昭和的な観光温泉での宴会は、過去の光景となるのか、否か。由布院温泉のように、素泊まりやバックパッカーを受入れる柔軟な保養地を国民は選択するのか?緊急事態宣言の全域解除を受けて、今後、各温泉観光組合はどのような舵取りを行っていくのだろうか。

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