視界不良の2020年消費~流通大手イオンはどう動くか(前)
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売上規模8兆円超の流通大手のイオン(株)では今年3月、23年ぶりに社長が交代。創業家出身の岡田元也氏が会長に退き、吉田昭夫氏が社長に就いた。スーパーやドラッグストア、SC(ショッピングセンター)開発・運営、金融などさまざまな事業を展開する同社では低収益事業の改革が目下の経営課題だ。2021年2月期は業績に大きくブレーキがかかる見通し。コロナ禍で消費行動が変化するなか、巨艦イオンの経営改革は加速するか。
2020年2月期決算は増収増益、総合金融、ディベロッパーが牽引
イオングループは、純粋持株会社イオンの傘下に連結子会社287社、持分法適用関連会社28社を抱え、グループ従業員数58万人、店舗数2万店超(国内外)を擁する巨大流通集団だ。
2020年2月期の連結業績は、売上高に相当する営業収益が8兆6,042億円(前期比1%増)、本業の儲けを示す営業利益が2,155億円(1.5%増)と増収増益を確保した。営業収益はほぼ期初の予想通りだが、営業利益は期初予想の2,300億円に対して下振れし、微増にとどまった。一口に流通業と言ってもイオンの手掛ける事業領域は幅広い。そのため、個別事業の業績を見なければ実態をつかみにくい。
イオンの事業セグメントは、GMS(総合スーパー)事業、SM(スーパーマーケット)事業、ヘルス&ウエルネス事業、総合金融事業、ディベロッパー事業、サービス・専門店事業、国際事業の7つ。GMSは衣食住の幅広い商品を扱ういわゆる大型スーパー、SMは食品を中心にそろえる業態だ。ヘルス&ウエルネスはドラッグスストアや美容・健康関連。総合金融はクレジットカード事業や銀行業で、ディベロッパーはSC開発・運営事業。サービス・専門店は総合ファシリティマネジメント事業、衣料や靴などの専門店事業だ。各事業の主要企業は表の通りだ。事業別の営業収益をみると、GMS3兆705億円、SM3兆2,243億円、ヘルス&ウエルネス8,832億円、総合金融4,847億円、ディベロッパー3,719億円、サービス・専門店7,395億円、国際4,392億円。営業収益構成比ではSMが35%、GMSが 33%と、GMSとSMで全体の7割近くを占めるのだが、これが営業利益でみると一変する。
各事業の営業利益は、GMS72億円、SM215億円、ヘルス&ウエルネス350億円、総合金融704億円、ディベロッパー632億円、サービス・専門店51億円、国際103億円。稼ぎ頭は、売上規模の大きいGMSでもSMでもなく、総合金融とディベロッパーである。むしろ、GMSとSMの利益水準の低さが際立っている。営業利益構成比で総合金融は33%、ディベロッパーは30%。これにヘルス&ウエルネスを加えると、これら3事業で全体の8割を占める。
前の期に比べてどうだったかをみると、GMSとSMが両事業とも減益となったが、総合金融、ディベロッパー、そしてヘルス&ウエルネスの3事業が増益となった結果、連結では増益を確保している。
ちなみに、イオンのこうした事業構造は、もう1つの流通大手(株)セブン&アイ・ホールディングスと好対照だ。セブン&アイ傘下の企業は約170社で、主要企業はコンビニエンスストアの(株)セブン-イレブン・ジャパン、GMSの(株)イトーヨーカ堂、SMの(株)ヨークベニマル、百貨店の(株)そごう・西武の4社。連結営業利益4,242億円(20年2月期)のうち6割をセブン-イレブン1社で稼ぐ。しかも、コンビニ、GMS、SM、百貨店などの事業間の関連がほとんどなく、ほぼ各事業が独立している。これに対して、イオンの場合は、SCの核テナントがGMSやSMだったり、小売事業をベースに各種の総合金融サービスを手がけたりするなど事業間の関連が強い。
(つづく)
【本城 優作】
<COMPANY INFORMATION>
イオン(株)
代 表:代表執行役社長 吉田 昭夫
所在地:千葉市美浜区中瀬1-5-1
設 立:1926年9月
資本金:2,200億700万円
連結営業収益:8兆6,042億円(20/2)関連キーワード
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