【女帝の履歴書】学歴詐称疑惑がカイロ大も巻き込んだ新展開 都議は卒業証書公開を要求
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「学歴詐称」疑惑を“強行突破”できるか
「コロナ対策でメデイアに露出しているから小池氏の圧勝だろう」という都知事選の予測が揺らぎつつある。元検事の郷原信郎弁護士が「虚言に塗り固められた小池百合子という女性政治家の『正体』を見事に描き切った」と絶賛する石井妙子著『女帝 小池百合子』が、発売一週間で7万部を超えるベストセラーになったのだ。出版した文藝春秋が誇る“文春砲”こと『週刊文春』6月4日号(5月28日発売)も連動するかたちで、「カイロ大学首席卒業の嘘と舛添要一との熱愛」と題する記事で『女帝』を紹介した。
「小池知事 対 文藝春秋」の様相も呈するなか、郷原氏がブログで法律家の視点から小池氏の学歴詐称疑惑を検証。6月2日に「都知事選、小池百合子氏は『学歴詐称疑惑』を“強行突破”できるか」の第一報、6日にも「小池百合子氏『卒業証明書』提示、偽造私文書行使罪の可能性」と題する第二報の論考を出した。そして3日後の9日に郷原氏は、「小池百合子東京都知事の学歴について」と題して外国人特派員協会で記者会見。ロンドン在住の作家の黒木亮氏(カイロ・アメリカン大学大学院中東研究科修士号取得)もオンライン参加をした。
カギは「学歴詐称」より「偽造私文書行使罪」
まず「再燃する小池百合子の『学歴詐称』疑惑――首席も、卒業すらも嘘なのか」(5月29日の現代ビジネス)などの記事を執筆してきた黒木氏が小池氏の「カイロ大卒」を嘘と確信した理由を列挙。その1つが、都議会などで卒業証書の公開を何度求められても拒否し続けていることだった。
続いて郷原氏が自身のブログを基に学歴詐称疑惑の論点について説明。学歴詐称は公職選挙法(235条2項)の虚偽事項公表罪にあたり、今回の都知事選でも「カイロ大卒」で押し通して〈強行突破〉するかたちで小池氏が再選されたとしても、同法違反で告発されて「『東京地検特捜部』VS『女帝小池百合子』の真剣勝負になる」(郷原氏の第一報)と見ているのだ。
ただしカイロ大学が「小池氏は卒業している」と声明を出すなど学歴詐称疑惑を否定しているため、捜査のハードルは高いとも郷原氏は指摘する。一方、事件化のハードルが低いのは「偽造私文書行使罪」(郷原氏の第二報参照)とも指摘した。4年前の都知事選で小池氏は、フジテレビの『とくダネ!』(2016年6月30日放送)でカイロ大卒業証書を示したが、これが偽造の疑いがあり、偽造私文書行使罪に該当する可能性があるというのだ。
先の週刊文春も「小池氏の卒業証書を子細に点検すると、証明スタンプが不自然に楕円にゆがみ、滲んでいる」と偽造の疑いを指摘。「エジプトでは卒業証書の偽造が容易」という地元関係者のコメントも紹介していた。本サイト記事「【学歴詐称疑惑】再燃!女帝の学歴をめぐる疑惑~小池都知事の『カイロ大首席卒業』は本当か」では、小池氏とフジテレビの癒着を問題視したが、卒業証書が偽造の場合、フジテレビは小池氏が偽造私文書行使という犯罪行為を実行する場を提供したことにもなる。
そこで質疑応答で私は「小池氏とフジテレビは共犯関係ではないか。フジの責任はないのか」と聞いたところ、郷原氏は「偽造を知っていて卒業証書を示したのなら共犯関係になるが、それを示すのは困難。ただ学歴詐称疑惑が広がっているときに、あの番組が放送されて鎮静化したのは間違いない」と答えた。
ただし、「報道は事実をまげないですること」と定めた放送法への違反の疑いは残る。加えて放送法が定める論点の多角的な提示については「違反」が濃厚だ。「カイロ大卒は嘘。卒業証書は偽造」と見る“学歴詐称肯定派”と、「カイロ大卒は事実。卒業証書は本物」と見る“学歴詐称否定派”が対立するなかで、フジテレビは後者の主張のみを紹介して事足りたからだ。
カイロ大声明の背景は
学歴詐称疑惑が再燃するなかでカイロ大は6月8日、「1976年10月にカイロ大学文学部社会学科を卒業したことを証明する。卒業証書はカイロ大学の正式な手続きにより発行された」という声明を出した。しかし、疑惑の鎮静化に有効なのかは疑問だ。先の黒木氏は「偽造私文書行使で刑事告発までされた小池都知事」(6月11日のJBpress)のなかで「カイロ大学の声明の背景には、日本のメディアによる卒業証書類の追及を断ち切るのに協力してほしいという小池氏側からの、文面も含めた要請があったのではないか」と指摘。都議会で学歴詐称疑惑を取り上げた4人の自民党都議の1人、川松真一朗都議もこう話す。
「カイロ大学から声明が出されたならば、都知事は自ら卒業証書を出した方が逆に疑惑は晴れると思いますけれども。(カイロ大のお墨付きをもらったので卒業証書を出せば)何の疑念もなく、都知事選に臨むことができると思います。今でも小池氏は『フジテレビに卒業証書を出した』と言っているので、都議会にも出してくださいというのが我々の求めてきていることです」
4年前のフジテレビで出した卒業証書を再び公開すれば学歴詐称疑惑は晴れるが、カイロ大の声明というお墨付きが出たのに小池氏が公開を拒めば、逆に「カイロ大は嘘」という疑惑は深まることになる。ケンカに強い「女帝」の次の一手が注目される。
【ジャーナリスト/横田 一】
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