【トップインタビュー】積極的な成長投資で未来を拓く インドを海外事業の柱の1つに

リックス(株)
代表取締役社長執行役員 安井卓 氏

 1907年創業の老舗ながら、積極的な成長投資で次の100年を見据える産業機械商社のリックス(株)。7代目の安井卓代表取締役社長執行役員は、蓄積した内部留保を基にリックス協創センターの設立やインド新工場などに投資し、メーカーとしての機能を強化しつつグローバル展開を加速。鉄鋼・自動車に加え、半導体分野にも広がる事業基盤を強化している。地域に根ざしながら世界市場で成長を狙う姿勢は、地元企業の海外戦略にも示唆を与えている。安井社長に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)

内部留保を成長投資へ

リックス(株) 代表取締役社長執行役員 安井卓 氏
リックス(株)
代表取締役社長執行役員 安井卓 氏

    ──伝統ある企業の7代目として、どのような取り組みを行っていますか。

 安井卓氏(以下、安井) 私は役員のなかでは最年少です。幸い、2019年の就任時には先代たちが蓄えた内部留保があり、良い時に社長に就任したからこそ、これを成長のための投資に使おうと考えました。20億円を投じた研究開発施設「リックス協創センター」(粕屋町)やインド新工場設立、10年で10億円規模のITシステム投資など、これらはすべて次の100年を生き抜くための投資です。

 社長に就任してからの大きな決断の1つが、上場する東証の市場再編で「プライム市場」を選択したことです。海外展開においてプライム上場は、いわば大きな信用を得る「パスポート」になります。そのために、IR活動やメディアでの露出、投資家との面談に時間の許す限り積極的に取り組むようマインドセットを変えました。

インドで次なる成長を

 ──今月、インド南部・ベンガルールの新工場が立ち上がるなど、インドに注力されていますね。

 安井 当社は現在、米国・中国に加え、人口が多く中間所得層も増えているインドに注力しています。当社のロータリージョイント(回転継手)などは、従来からインド現地の代理店を通して、取引がありました。関連会社の(株)ROCKY-ICHIMARUが手がけるタイヤの加硫機バルブ(ロッキーバルブ)が海外展開において重要な製品です。生のタイヤを焼く加硫工程で蒸気を制御するバルブを製造しています。大手日系タイヤメーカーなどのインド進出にともない、18年にムンバイに販売会社を設立しました。

 ──現地での販売状況はどうですか。

 安井 海外では事業環境が異なり、たとえばインドでは現地の代理店がすでに商権をもっているなど、日本と同じように商売を行えるとは限りません。当社は日本では商社事業が約8割を占めていますが、海外では主導権を握れる商品をもち、自社でハンドリングできることが大事だと思います。私たちがインドに進出するうえでの核となったのがロータリージョイントやロッキーバルブなどです。

 現地では代替品が使われていて効率が悪い現場などがあり、製鉄所などで「これを使ってみてはどうですか」という提案をしながら、徐々に中核商品の取引を広げていきました。現地での売上は予想より早く伸びており、インドのパワーを実感しています。

 ベンガルールの工場では、日本から現地に部材を送って生産しますが、将来的には現地のニーズに合わせた設計や現地調達によるカスタマイズを行える体制を目指しています。先に進出した中国でも数年かかりましたが、そうしたローカライズを行える体制を構築しています。

 ──中国は景気の悪化が懸念されますが、販売はいかがですか。

 安井 ロータリージョイントを生産する中国東北の大連工場は昨年過去最高の売上を記録しました。日系企業以外にローカルの顧客を多く抱えていることが、販売が安定し好調な要因だと思います。当社では顧客に占めるローカルの比率が高くなっています。

 日本を取り巻く経済安全保障の観点からも、インドを拠点にすることは重要です。私は福岡商工会議所の国際委員会委員長も務めており、当社インド進出の状況をオープンにすることで、地元企業の海外進出の背中を押し、地域の国際化に貢献したいと考えています。

30年に700億円、海外20%へ

 ──セグメント別の売上高では鉄鋼、自動車に次いで半導体が大きいですが、TSMCと関連サプライヤーの九州進出についてはどう関わっていきますか?

 安井 TSMCとしては商社を介さずにメーカーと直接やり取りをしたいという意向があるとされ、またサプライヤーとして直接取引をするのは容易ではありませんが、当社のロータリージョイントは、大手半導体製造装置メーカーに採用されており、TSMCで使われる装置のなかにも使用されています。熊本では阿蘇郡西原村に土地を確保しており、ここで半導体製造装置の周辺機器である電源装置やヒータ、ポンプなどの修理再生を請け負うというメンテナンスビジネスを計画しています。装置メーカーを経由するのではなく、消耗したパーツを直接交換して新品同様にして納めるメーカー的な対応を行うことで、エンドユーザーに近いかたちでのビジネスを行っていきます。

 20年に策定した30年度までの長期ビジョン「LV2030」では、30年度に連結売上高700億円という目標を掲げています。26年度までの中期経営計画では600億円を目標とし、26年3月期は約570億円で着地する見込みです。KPIには海外売上比率も設定しており、30年度までに売上高の20%にあたる約140億円を海外で稼ぎたいと考えています。日本の人口が減るなか、グローバル市場で1%でもシェアが取れれば大きな数字になります。インドではモータリゼーションの進展にともない、自動車やタイヤの需要、それにともなう工作機械の需要が飛躍的に増えると期待しています。7代目として、この100年企業の基盤を生かしながら、さらなる成長を目指していきます。

【文・構成:茅野雅弘】


<PROFILE>
安井卓
(やすい・たかし)
1978年8月生まれ、佐賀県白石町出身。福岡大学工学部化学工学科(現・化学システム工学科)卒、九州大学大学院総合理工学府物質理工学専攻修了。2003年4月古河電気工業㈱に入社。06年4月リックス㈱に入社。事業開発本部事業企画部長、取締役事業開発本部副本部長兼事業企画部長、取締役企画本部長、取締役営業本部副本部長等を経て、19年4月代表取締役社長に就任。

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