2024年11月14日( 木 )

【都知事選2020】宇都宮氏と山本氏、一本化調整不調の裏側 「消費税5%減税」が壁に

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「消費税5%減税」を譲れなかった山本氏

宇都宮健児弁護士の出馬会見

 5月27日に「東京都知事選(18日告示・7月5日投開票)」への出馬表明をした宇都宮健児弁護士(立民・共産・社民などが支援)に続いて、れいわ新選組の山本太郎代表が6月15日に出馬を表明。反小池票を食い合うことが確実になった。宇都宮氏が会見で「誰が出ても降りない」と断言していた通り、両者の一本化は具体化することなく、山本氏は会見で野党統一候補擁立に至らなかった経過説明から始めた。

 まず「無所属での野党統一候補」として出馬の打診を受けた山本氏は「れいわ公認」を求めたため、交渉はいったん暗礁に乗り上げたが、5月に入ったところで話し合いが再開。山本氏が「無所属で出る代わりに知事選を戦う政治団体を『れいわ東京』にすること、次期総選挙で『消費税5%減税』を野党統一政策にすること」という妥協案を示したが、どちらも拒まれたという。

 「(政治団体名は)来年の都議選に向けた事前宣伝をされては困る」「(5%減税は)党内手続きが間に合わない」が理由だったが、前者は棚上げにしても後者は譲れなかったと山本氏は強調。「5月おわり」に交渉は決裂したと振り返った。

 「(最後の話し合いから6月18日告示の都知事)選挙が始まるまで20日間以上ある。『20日間を待っても終わらない党内手続き』ということは、『消費税5%減税について決められない』という宣言だろうと私自身は受け取った」(山本氏)。

小池票を「削りにいく」(山本氏)

 冒頭で山本氏は、政策も支持者も重なり合う「宇都宮氏との一本化調整」についても説明。山本氏は宇都宮氏と3月1日と5月25日に会い、。一回目の面談で山本氏が都知事選出馬の可能性を伝えると、宇都宮氏は「もし野党統一候補として出る候補者が納得いかない場合には、自分は出ることになるだろう」と話したので、「一本化は可能だろう」との感触を山本氏は得たという。

 しかし二回目の面談では、宇都宮氏が「誰が出ても必ず出る」と出馬の意向を告げら、山本氏が再び出馬の可能性を口にしても「出れば良い。それぞれの政策を主張していくことが重要。政策提案という意味でも選挙に出る」という主旨のことを言われ、一本化交渉は決裂したという。

 こうした経過を説明しても質疑応答では、「宇都宮氏と票を食い合うのではないか」「小池氏や安倍政権を利するのではないか」といった質問が相次いだ。

 山本氏はこう反論した。「小池票を削れる存在」であると同時に「選挙に興味がないリーチできると自負」と強調。小池支持者を切り崩すことと投票場に足を運ばない無関心層の掘り起こしが役割だとして次のように反論した。

「私のもともとの支持をしてくれている方々が、感情的に人情的に宇都宮さんを応援したいんだという人が出てくることはあるかと思う。でもその場合にはそこは悩まないでいいと思う。だって誰に投票するか、誰を応援するかは個人が決めることだから。だから私が狙っていくのは小池さんの票を削りにいくこと。そして選挙自体にもうすでに興味がない、投票のたび捨てているという人たちを広げていく考えだ」

山本太郎代表の出馬会見

小池再選阻止には有権者の「自主的予備選」を

小池知事が出馬会見で掲げた「東京大改革2.0」

 今回、一本化は実現しなかったが、有権者が一種の自主的予備選を投票前に行うことは可能だ。2015年1月11日投開票の佐賀県知事選では、遅れて出馬した山口義祥知事が、圧倒的優位と見られた自公推薦の樋渡啓介・元武雄市長に奇跡の逆転勝利をした。この県知事選は、官邸お墨付きの政権追随型の樋渡氏と、オスプレイ受入と玄海原発再稼働に反対の島谷幸宏・九州大学教授と、中間派の山口氏の三つ巴の戦い。投開票日直前に自民党幹部(選対委員長)は勝利宣言をしていたが、まさかの敗北を喫した。

 島谷氏の支援をしていた嘉田由紀子・前滋賀県知事(現・参院議員)はこう分析していた。「最終盤で島谷票の一部が山口氏に流れて逆転したとみています。実際に『本当は島谷さんに入れたかったけれども、政権追随の樋渡知事誕生を避けるために山口さんに入れた』という電話が何本もかかってきました」。

 有権者が自主的な予備選を行い、世論調査二位の山口氏に絞り込み、島谷票の一部が山口氏に上乗せされて逆転勝利となったようなのだ。今回の都知事選でも、同じようなことが行われるのかが注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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