2024年11月24日( 日 )

【凡学一生のやさしい法律学】関電責任取締役提訴事件(3)真実隠蔽過程の序章

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 かつて「関電疑獄」として、関電収賄事件の解説記事を連載した。そのとき、不祥事を引き起こした取締役会自身の手によって、ヤメ検を中心とした真相究明を目的とする「第三者委員会」に真実追及を依頼した時点で、真相の隠蔽に関西電力(株)が着手したと指摘した。事態は、当時指摘した通りに進んでいる。

 今回は、取締役の「善管注意義務違反」を提訴の理由にした。だが、自ら犯した犯罪行為を正直に告白しさえすれば済む「真相究明」、贈賄者が残した贈賄記録の存在を認めれば済む「真実究明」を、関電に大きな利害関係をもつヤメ検を中心とする「第三者委員会」に依頼したこと自体、法的な根拠も意義も不明であり、むしろ“真実の究明”を阻止している。
 関電収賄事件は、重大な取締役の義務違反、つまり、「善管注意義務違反」であった。とくに、ヤメ検らが中心となって就任してきた監査業務担当役員らが義務を怠ったことは、著しい。天下り元である、監督官庁の管理監督の責任の不存在も甚だしい。まさに、ズブズブの関係である。

 「関電疑獄」は、長年、収賄を続けた監督官庁出身の業務執行担当取締役と、収賄をお目こぼしする監査業務執行担当のヤメ検監査役の共同の犯罪隠蔽工作の結果、闇のなかにあり続けた。贈賄者死亡時の税務調査の結果、偶然に「関電疑獄」が日の目をみることになったのであり、事件の構図は極めて単純である。

 そもそも「第三者委員会」などまったく不要なものだと誰の目にも明らかであるにもかかわらず、報道機関は事件を曖昧にするために協力した。まさか関電などの10大電力会社が巨大な広告宣伝費を提供するスポンサーであることを、忖度した結果ではあるまい。

 事件の核心を示す物的証拠は、長年にわたって、まさかのときに身を守るために贈賄者が書き残した、贈賄記録に他ならない。この記録が、すべての「真実」を物語っている。
 小学生にも理解できる事件の真相の核心をつく証拠について、いまだに報道関係者をはじめとする識者が言及しないことから、日本の報道記者の質や識者の見識の嘘が垣間見える。

 以上の視座に立てば、今回の「トカゲの尻尾切りの提訴」がいかに茶番であるかが理解できるだろう。この提訴事件をいかにも重大な決定であるかのごとくマスコミが報道することが、すでに隠蔽の手助けとなっていることは、いうまでもない。

 報道すべき事実は、贈賄者が残した犯罪記録の顛末だ。重大な証拠は、どこに行ったのか。今後の裁判過程でも、もっとも重要な証拠である贈賄者メモが言及されるか否かで、裁判自体が茶番であるかどうかを判断できる。

(つづく)

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