【縄文道通信第40号】縄文道は未来道 縄文文化の影響は未来永劫に続くパワーなり 縄文道―武士道―未来道
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縄文文化の影響は未来永劫に続く
イスラエルの世界的な歴史学者のユバル・ノア・ハラリ博士は、現代文明に侵された現代人は狩猟民族から学ぶべきだと警告を発した。「狩猟民族は五感を磨いていないと滅亡する危機感をもっていたが、現代人は人間にとってもっとも重要な五感を失いつつある」。
約1万4,000年続いた縄文文化は世界最古の縄文土器を生み出した。狩猟、漁労・採集をしながら定住生活を成し遂げた稀有なる文化でもある。
放送大学の飯田汎教授はこの程、激動の世界に対処する『思考の転換 5つの鍵』という書籍を著し、筆者も贈呈され拝読した。飯田教授は千年持続社会をつくる日本文明ダイナミズムの根幹として、「縄文地下水脈」という表現を使用している。これは哲学者の故・梅原猛氏が指摘した、縄文文明は日本人の源流で、かつ基層であるという意味と同じコンテクストだと思う。
筆者が、縄文人の狩猟民族としての生存力、パワーを現代に蘇らせるという意味で「縄文道」を提唱するのは、冒頭のユバル・ノア・ハラリ博士が指摘した「五感の回復」とも通じる。
今回の新型コロナによる世界的パンデミックの影響下での、世界中の賢者、識者のメッセージは「生命の危機への対処」をどうするかということだ。常に世界的なメデイアに登場する地理学者のカリフォルニア大学のジャレッド・ダイアモンド博士も「人類共同体の目覚めと協働の精神」を提唱していた。ダイアモンド博士は当社の設立時から引用しているが「日本の縄文文化は世界史的にみて、世界的な偉業である」と非常に高く評価している。
以上を踏まえて、第38号で、縄文文化が現代に多くの影響を与えていることについて、衣食住、農林水産・第一次産業、陶工、漆工、宮大工等の例を挙げたが、未来への影響はどうだろうか、仮設を立ててみたい。
縄文文化が未来に与える大きな影響
たとえば、延期された東京オリンピックの「神宮のメインスタジアム」は世界的な建築家の隈研吾氏の設計だ。スタジアムは多くの木材が使用されているし、外観の部分も木材が露出し、日本的な美観を表している。隈博士は日本の基層である縄文文化を念頭にして、次の時代の弥生文化へのバトンタッチを、ヘーゲルの弁証法的哲学的用語の止揚(アウフヘーベン)という言語を使って説明している。
すなわち縄文は弥生で否定されるが、基層に残り、弥生と統合される(止揚される)。日本文化は縄文文化を基層に常に連続して止揚されてきたが、統合の過程で縄文の影響は連続的に伝達されてきて、現代にも影響が残されていると主張している。
世界の文明は、常に以下の四段階を踏まえて発展する歴史法則があることは、文明史家の共通認識である。
第一段階:吸収過程(ABSORPTION STAGE)
第二段階:選択過程(SELECTION STAGE)
第三段階:適応過程(APPLICATION STAGE)
第四段階:創造過程(CREATION STAGE)日本文明は、縄文を基層として世界からこの四段階を踏まえて発展してきたといえる。すなわち日本の風土と日本人の価値観に従って選択し、適応して、最終的に日本化してきた。
戦後の日本人の文化論を論じる知識人としても世界的に著名な故加藤周一氏が、日本文化は「雑種文化」だという表現をした。医者、文学者、又哲学者としての彼の視座を踏まえての「雑種文化論」だ。筆者はこの文化論、すなわち世界中の思想、哲学、科学、技術、芸術すべてを貪欲に飲み込む体質の根底に流れているのは、縄文文化の基層があったからだと、解釈していた。
上記の「止揚説」「四段階文明発展説」「雑種文化論」を念頭に置いて、今後の日本の文化の発展を予測すると、源流、基層の縄文文化に回帰しながら発展してゆくと予測できる。
第38号で紹介した三宅一生の縄文のファッション「セッションワン」、和食文化の原点である縄文食、漫画文化の原点であるペトログリフ(楔形文字)、平安時代の鳥獣戯画、江戸時代の浮世絵と、日本画の系譜を引くダイナミックな表現力と多方面で縄文文化を継承して、現代に活かされている。
日本文化の多方面での「COOL JAPAN」の影響力は、これからもますます大きくなると思う。とくに冒頭で述べたハラリ博士の「五感の回復」は縄文パワーの現代への蘇りと解釈できる。五感は日本の伝統的格闘技、柔道、剣道、空手道、合気道、相撲道は常に精神的、肉体的に修練を積むため、五感が鍛えられる。
さらに日本伝統の芸事、茶道、華道、香道や基本に流れる禅宗の影響による五感の練磨と、日本の伝統には多くの五感を鍛える場があり、日本人は日常的に親しんでいる。
以上から、グローバル化、デジタル化がさらに進化しても、基層に縄文文化の精神的な支柱があり日常的に五感を鍛えているため、コロナの克服も含めて逞しく生き延びて行くことができると確信している。常に縄文道、すなわち縄文の精神パワーを五感とともに現代に蘇らせたら、日本の長期低迷からの脱却も可能と考えられる。
Copyright Jomondo Kenkyujo
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