【縄文道通信第41号】縄文道―天職ガイド 縄文陶工と現代の陶工との関係性 縄文道―武士道―未来道(後)
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(一社)縄文道研究所
NetIB-Newsでは、(一社)縄文道研究所の「縄文道通信」を掲載していく。
今回は第41号の記事を紹介。
好きな分野の本格的な追求は、天職につながる
1人の証券会社のエリートサラリーマンだった知人が、備前焼の陶工に変身した。松井宏之氏である。最近は上海、ニューヨーク、パリ、ケルンと海外でも個展を開催している。松井氏の作品も何度か拝見したが、備前焼の土を活かした縄文の息吹を感じさせる作品が多い。彼も天職を得たといえよう。
また冒頭で紹介させていただいた瀬戸の陶祖の本家の家系を引き継ぐ、陶工・加藤 唐三郎氏も、伝統を唐九郎窯として引き継ぎ、陶祖から31世である。約30年前にお会いし、父親の唐三郎氏の作品をいただき、今も家宝として大事にしている。彼も現代まで天職を引き継いでいる代表例である。
30年前に豪州のパース駐在時に、日本で最高の陶芸家としての評価を得ていた、益子の人間国宝陶工・島岡達三氏をアポイントメントなしに訪ねたことがあった。訪ねて驚いたのは世界中から多くの若き陶芸家(10人以上)が、島岡達三氏の家で修業に来ていたことだった。このときに島岡達三氏と世界の陶磁器文化につき意見交換し、最後に彼の縄文象嵌の茶器をお土産にいただき、家宝として大事に保存している。
パースの後に、幸運にもベルギーのブリュッセルに駐在の機会を得た。この駐在時にロンドン出張時に必ず立ち寄ったのが、世界最高の陶磁器博物館といわれるビクトリア・アルバート博物館であった。この博物館には浜田庄司、島岡達三、バーナード・リーチの作品が、常設展にて展示されていた。島岡氏の作品は鑑賞するたびに、感動と誇りを感じ、忘れられない思い出だ。
新型コロナの影響で、日本人は生き方、働き方を根底から問われつつある。リモートワークの進展、複数の仕事が可能な仕事環境、定年制延長(80歳まで雇用する企業も出てきた)、年齢制限、性差別、障がい者と健常者の差別のないDIVERSITY(多様な)社会実現の方向性、AI、ロボット普及による労働力の代替など、大変な勢いで変革が起こっている。
恐らく日本人が、とくに若者が真剣に自己の能力、性格を見直し、自分にもっとも相応しい職業―天職を見出していく時代に突入していると言って良い。この傾向は、一言でいえば「好楽得」――好きな分野は楽しく、自ずと得意になる―の本格的な追求で、結果として天職につながる時代だ。
冒頭の2人の天才棋士、サラリーマンから陶工へ転換した松井宏之氏、陶工として31世の加藤唐三郎氏は自分の才能に気が付き「好楽得」を深く認識し、努力、精進、修練を重ね、今の地位を獲得したといえる。
筆者が約22年前に人材業界に参画し、「好楽得」に気づき、主張し始めたときに、出版された書籍が「能力Q-セルフ・プロデユース」である。ここで述べた能力のなかで、バブル崩壊後IQだけでなくEQ-感性が重要な時代に入ったことを提言した。換言すれば、人間力と人間性が問われる時代に入ったということだ。
この書籍を企画した、「能力Q」の命名者は企画会社の社長・稲村哲氏だが、稲村氏には筆者が提唱する「縄文道」に、最初の段階から強力な支援をいただいている。不思議なご縁だ。時代はいよいよ若者への天職ガイド(指南役)が重要な時代に入ったといえよう。
(了)
Copyright Jomondo Kenkyujo
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