『脊振の自然に魅せられて』夏の沢登りを楽しむ
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夏の恒例
脊振山系には多くの沢がある。福岡市の都心からわずか1時間ほどで入渓ポイントまで行けるのも脊振の魅力の1つだ。ワンダーフォーゲル(以下、ワンゲル)OB仲間との野河内渓谷の沢登り(遡行)は夏の恒例になっており、今年は8月1日に開催した。
登山用地図アプリの(株)ヤマップのH社長から、「野河内渓谷の沢登りに行きたいのですが、同行できますか。社員7名も参加させたいです」と連絡をいただき、「いいですよ、ご一緒しましょう」と返信した。
夏の沢登りのリーダーは、脊振の自然を愛する会の副代表、山の達人の T氏である。今年の沢登りの日程と参加メンバーをT氏に伝えたところ、参加者が多いため初参加であるヤマップの社員をサポートするのは難しいと判断し、沢登りの達人 S氏にも協力を依頼した。
同会員である放送局のお天気キャスターT氏も誘い、山の雑誌記者 N氏もぜひ参加したいと連絡があった。両者ともに初参加のため、沢登りのスキルを懸念したが、経験を積むのも良いと判断した。沢登りの参加者は、脊振の自然を愛する会のメンバー7名、 S氏のグループ7名など総勢21名になった。
ヘルメットを着けて、いよいよ渓谷の入り口へ
8時30分に現地の駐車場に集合した。簡単な朝礼とストレッチを行い、ヘルメットを着けて沢登りの装備を整えて渓谷の入り口へ向かった。
渓谷は7月の大雨でいつもより水量が多く、水の勢いも強かった。全員で一列になって上流へと向かったが、5分も進むと、5、6人が集まって何やら話している。初参加の雑誌記者N氏が、ポケットに入れていた防水カメラを沢に落としたらしい。
沢登りでは持ち物をすべて紐で結ぶか、チャック付きのポケットに入れることが鉄則である。腰まである沢の水の底をのぞくと、少し濁った水の底に黄色い物体が見えた。カメラである。落とした本人は拾うことはできないとあきらめていたが、何とか引き上げることができた。
トラブルもあったが、さらに上流を目指す。お天気キャスターT氏は少し緊張した表情であった。
しばらく進むと、高さ5mほどの水流の強い滝に到達した。ワンゲルOBの先輩T氏も、何とかこの流れを乗り越えようと強い水流に耐えていたが、ある時に突然、水流に負けた。いつも賑やかなT氏は「何とも水流が強い!」と驚きの声を上げ、お腹を上にした「ラッコ泳ぎ」で足が届くところまで流された。ザックのなかに空気が入っているため、水を背にすると浮かぶのである。T氏の赤いキズだらけのヘルメットが、山男の歴史を物語っている。
落差20m、幅5mの大滝のそばで、全員で休憩した。野河内渓谷の水は水無鍾乳洞からの伏流水のため、水温が低い。渓谷に降り注ぐ陽だまりが、冷えた体を温めてくれた。
記念写真を撮り、大滝を高巻き(迂回すること)して、大滝の上部へと向かった。大滝の上部から、激しく流れ落ちる滝の轟が聞こえていた。滝のしぶきが霧となって顔を冷やす。サポート隊が安全のためザイルを出してくれていたため、ザイルを頼りに大滝を登る者もあった。
最後にある落差5m、幅10mの滝も、その上部に2段目の滝ができて大量の水が流れ落ちており、いつもとは違う様相を見せていた。ここが滝登りの最終地点である。うしろに誰もいないことを確認し、「全員が沢から上がっている」とサポート隊に合図を送った。
滝のマイナスイオンを浴びる爽快感
渓谷から林道へ出て駐車場へと戻り、ヤマップの若いメンバーと 副代表の T氏らは上流の水無鍾乳洞一帯に咲くオオキツネカミソリの観賞に向かった。
筆者とワンゲル後輩S氏はお天気キャスターT氏らとともに、夏の花であるヤマゴボウやヌスビトハギなどの林道に咲く草花の鑑定をしながら、駐車場へと向かった。植物の名前を覚え始めた T氏に、「この花はなんですか」と尋ねられた。筆者は自然観察指導員でもある。
参加メンバーが駐車場に戻ってきた。けが人はなく、大人の水遊びの沢登りは無事に終わった。
夏に滝のマイナスイオンを浴びる爽快感は格別である。ヤマップの若い社員と交流し、老体に元気をもらった。来年、筆者と先輩T氏は喜寿を迎える。高齢となったワンゲル仲間といつまで沢登りを楽しめるかわからないが、あと1、2年は楽しみたい。
2020年8月26日
脊振の自然を愛する会
代表 池田友行関連キーワード
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