コロナ禍でキャッシュレス化は加速(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
コロナ禍で引き起こされた経済低迷を防ぐためという名目で、数兆ドル規模のドル紙幣が発行され、それらが株式や暗号資産などに流れ込んでいる。今回はデジタル経済の台頭により進んでいるキャッシュレス化を取り上げてみよう。
「金の呪縛」から解放されたドル
通貨は、現代では経済活動に欠かせないものとなっている。まず、その誕生から今までの歴史を振り返ってみよう。
通貨が誕生する前は、人々は物々交換で取引していた。しかし、物々交換では、相手が自分のもっているものを求めていない場合もあり、物々交換の相手を見つけることも簡単ではなかった。そのため、中国では現在の通貨が誕生する前に、お金の代わりとして「貝」が使われた時期もあったようだ。このような歴史を経て、どのような条件下でも同じ価値をもつ現在のお金が定着した。
経済活動とは切っても切れない関係で、潤滑油の役割をはたしている通貨だが、実際には課題もある。1971年にニクソン大統領は、米ドルの金との交換を停止すると宣言。今まで金の裏付けがあった通貨は、発行元の政府の信用に依拠するものへと変わった。
「金の呪縛」から解放されたドルは、紙幣や硬貨を自由に発行することができるようになり通貨の価値は徐々に下がっていった。2007年の世界金融危機で、強欲な資本主義の問題が表面化すると、現在の通貨制度に限界と怒りを感じていた匿名の人物であるナカモト・サトシ氏が脱中央集権化を目指し、ビットコインという暗号資産を発行した。このように、通貨は時代の流れとともに変遷を遂げてきた。
コロナ禍で急増するキャッシュレス
世界各国の政府が新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、外出自粛などのさまざまな規制を行っている。その結果として、現金の利用金額は急激に減少し、キャッシュレス化が進んでいる。さらに現金のみではなく、クレジットカードの利用金額も減っている。コロナ禍の規制により自由な行動が制限されているため、お金を使う機会が減ってしまったことも理由の1つであろう。
このような現象は、とくにヨーロッパにおいて顕著である。欧州中央銀行(ECB)によると、18年のユーロ圏の平均現金利用割合は53.8%で、なかでもスペインとイタリアの現金利用割合は87.0%と86.0%と、米国の26.0%や韓国の18.2%に比べると、とても高いことがわかる。
ところが、イタリアでは新型コロナウイルスが発生した3月になって、現金利用割合はなんと20%前後までに落ち込んだ。イギリスでも、現金利用が半分以下に減ったという。ロンドン中心部のある食品市場では、クレジットカード決済のみという紙が掲示され、その近くの別の食品市場でも、コロナ前には野菜の買い物に現金しか使えなかった店が、コロナ後には現金を受け取らなくなったという。コロナ禍は決済文化にも影響をおよぼし、キャッシュレス化を促進させている。
世界で現金の受け取りが減少した背景には、紙幣やコインに触れることによる新型コロナウイルスへの感染への懸念がある。たとえば韓国銀行では、市中に出回って韓国銀行に戻ってきた紙幣を、少なくとも2週間以上、金庫に保管することになっており、紙幣を詰める過程では、150℃の高温殺菌をしているという。香港研究チームも、「新型コロナウイルスが紙幣に付着した場合、4日間生存できる」という研究結果を発表している。
(つづく)
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