菅内閣がコロナ感染推進に舵を切った
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、「日本もコロナ感染第2波に巻き込まれる可能性が高まっている。現時点で、GoTo事業全面推進や外国人の入国規制緩和などの『コロナ感染推進』に舵を切ることは、政府の施策としてあまりに無謀だ」と訴えた9月28日付の記事を紹介する。
安倍内閣のコロナ対応は「3ミス」と表現できるものだった。
「3ミス」とは
1.コロナ軽視
2.コロナ戒厳令
3.検査忌避
である。コロナ軽視は台湾政府の対応を比較すると鮮明だ。
台湾政府は昨年末に武漢市の異変を把握した。
ただちにWHOに警戒の情報を伝達するとともに感染拡大予防措置を実行した。中国政府が武漢市を封鎖したのは1月23日。
台湾政府はこの日に武漢市からの入境禁止措置を取った。これに対して日本の安倍首相は1月24日に、在中国日本大使館HPから、春節の休暇に際しての日本訪問を呼びかけるビデオメッセージを中国国民に配信した。
中国政府が武漢市を封鎖し、新型コロナ感染症が世界規模の重大ニュースになっていた局面だ。その後も日本政府の対応は五輪と習近平国家主席の来日優先をベースにするものだった。
3月1日には7万人の濃厚接触者を生み出した東京マラソン実施を強行した。
3月20日には暴風の下で聖火到着式まで挙行した。
「コロナ軽視」をベースに置いていた。ところが、同じ安倍内閣が同時に真逆に向いた対応を示していた。
1月28日、安倍内閣は新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症にすることを閣議決定した。
SARS、MERSに匹敵する重篤な感染症であるとの認定を行った。この第2類相当指定により、無症状の感染者でも隔離措置(自宅療養を含む入院措置)を取ることが義務付けられた。
濃厚接触者に対する強制的な行政検査執行などもこの指定に基づいて実行された。
1月末の段階では新型コロナ感染症の実態がよく掴めていない。その後の日本の実情を見る限り、第2類相当指定は明らかに過大だった。
安倍内閣は「コロナ軽視」を基礎に置きつつ、その一方で「コロナ戒厳令」と呼ぶべき対応を示した。
小池都知事が「冷房と暖房を同時にかけるようなもの」と指摘したのは一理ある。突然、全国の小中高に対して一斉休校を要請するなど、コロナパニックを人為的に引き起こすような対応を示した。
最大の問題は「コロナ軽視」と「コロナ戒厳令」を同時並行で進めたこと。明らかなダブルスタンダードだった。
五輪と習近平国家主席訪日を優先したために、ちぐはぐな対応が生まれた。第3の問題は検査を妨害し続けたこと。
その理由は、厚労省・感染研・地方衛生研などを軸とする「検査利権ムラ」がコロナPCR検査を独占しようとしたことにあると見られる。
検査を実施することにより国費が投下される。
検査を独占することによって検体データを独占できる。
このことから、厚労省と検査利権ムラは一体となってPCR検査の独占を指向した。ところが、日本の検査能力は著しく低いものだった。
2月3日に横浜港に帰港したダイヤモンドプリンセスの乗員乗客は3,711人いたが、当初の検査実施人数は273人だった。乗員乗客を2週間、船内に監禁することを決定し、ダイヤモンドプリンセスの悲劇が生み出された。
当初に3,711人全員の検査を速やかに実施すべきだった。
失わずに済んだ命が多数あったと思われる。検査を広範に実施しないからコロナ感染症の実態を掴めない。
日本の公表データベースの致死率は2%。
新型インフルエンザの4倍の水準だ。
この致死率が事実であれば「コロナ戒厳令」が正当性をもつことになる。しかし、現実には潜在的な陽性者数は公表数値よりもはるかに多いと考えられる。
実際の致死率は2%よりもはるかに低いと考えられるのだ。日本政府は検査を忌避し続けてきたために、コロナの実態を掴めぬという大失態を演じている。
安倍内閣から菅内閣に引き継がれたいま、日本のコロナ対応はどちらに向かっているのか。この点は明白になりつつある。
菅義偉首相は「コロナ戒厳令」から「コロナ軽視」に完全に軸足を移しつつある。
GoTo事業全面推進と外国人の入国規制緩和に進み始めた。
「コロナ軽視」への明確な転換は早速劇的な変化を生み出した。9月19日からの4連休の人出が爆発した。
各地の人出指数は前年比プラスを記録した。
コロナ以前の数値を上回った。これが新規陽性者数として反映されるのは4週間後。
世界はいま今秋から来春にかけてのコロナ感染第2波に突入する様相を示している。
日本もその感染第2波に巻き込まれる可能性が高まっている。この状況下での入国規制緩和は「コロナ軽視」を超えて「コロナ推進」に該当する。
強毒性ウイルスの日本での感染拡大も視野に入れる必要が生じる。
「コロナ推進菅新内閣」は早晩、重大局面に直面することになる可能性が高い。「コロナ戒厳令」を場あたりで発動したために経済活動が一気に収縮した。
2020年4~6月期実質GDP成長率は年率マイナス28%を記録した。まさに未曽有の大不況への突入だ。
株価は大暴落したが急速に反発した。
政府と日銀が大規模マネーを供給したからだ。
モルヒネ過剰流動性と表現できる。実質無利子・無担保融資が怒涛の如く供給されている。
日銀のマネーストック統計を見れば異常な現実が一目でわかる。モルヒネは極めて強い鎮痛効果をもつが麻薬中毒の副作用をもつ。
モルヒネ過剰流動性による鎮痛効果で、発生している問題がまったく見えない状況に置かれている。持続化給付金や政策公庫などによる融資で、真に苦境に陥っている事業者に支援が行われているなら合理的側面があるが、実際には、政策を利用して不要不急の手元資金を積み上げる動きが広がっている。
この「過剰流動性」がキャピタルゲイン狙いで株式市場に流入している可能性が高い。1987年から89年にかけて発生した「真正バブル」は過剰流動性によって生じた、うたかたの宴だった。
安倍内閣は第一次補正と第二次補正で58兆円もの国費をばらまいている。
この巨額バラマキは間違いなく衆院総選挙用の買収資金である。
このバラマキ効果がピークに達する局面で衆院総選挙が挙行されるだろう。
モルヒネ過剰流動性も、もちろん、衆院総選挙に向けたバラマキ資金なのだ。中曽根元首相葬儀に1億円もの国費が投入されることになったが、このようなことがあるから、10兆円もの予備費計上など許してはならないのだ。
日本国憲法は財政支出を国会決議事項としている。
予備費はあくまでも例外としての位置付けだ。
10兆円もの予備費計上を容認した野党の責任も重い。政府が葬儀に1億円の国費投入が必要だと判断するなら、予算に明記して国会の議決を得るプロセスを踏む必要がある。
財政民主主義を形骸化させている責任を野党も負っていることを見落とせない。コロナには未知の部分が多い。
まだ、すべてが解明されていない。
現時点で「コロナ感染推進」に舵を切ることは、政府の施策としてあまりに無謀だ。菅内閣の評価はコロナ問題の帰趨によって激変することになる。
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