人為的創作物「維新」の衰退~「大阪市廃止案」住民投票否決(中)
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政治経済学者 植草 一秀 氏
人為的創作物としての「維新」
今回の住民投票結果が与える影響は大阪独自の問題にとどまらない。それ以上に重要と考えられるのが日本の政局全体に与える影響だ。そもそも、「維新」勢力がどのような経緯で浮上、拡大してきたのかを知る必要がある。
「維新」が日本のマスメディアによって大宣伝され、人為的に注目を集めたのは2012年のこと。同年12月の衆院総選挙で野田佳彦氏が率いる民主党が惨敗して第2次安倍内閣が発足した。
この衆院総選挙に際して、マスメディアは「維新」勢力に関して異常なほどの宣伝活動を展開した。その延長線上に、20年におけるメディアによる維新勢力に関する常軌を逸した大宣伝が存在する。20年のコロナ騒動下においても、吉村洋文大阪府知事と橋下氏のテレビへの異常なほどの露出が際立っていた。09年8月総選挙で小沢一郎―鳩山由紀夫(後に友紀夫に改名)両氏が主導する民主党が歴史的勝利を実現した。その結果として鳩山内閣が発足した。
鳩山内閣は日本政治の基本構造である、(1)米国支配、(2)官僚支配、(3)大資本支配を打破しようとした。そのために、激しい人物破壊工作の対象にされた。日本を実効支配し続けてきた米国の支配者は、小沢―鳩山ラインが主導する民主党政権を破壊することに総力を結集した。
その意向を端的に明示したのが、ウィキリークスが暴露した情報だった。
小沢―鳩山ラインが主導する民主党が政権を樹立し、10年2月に来日したカート・キャンベル米国務次官補は、国会内で民主党の小沢一郎幹事長と会談。翌日には、韓国・ソウルでキム・ソンファン大統領首席秘書官と会談した。ウィキリークスによって暴露された、米国に送信された会談内容を記したメモには、日本外交のラインを小沢―鳩山ラインから菅―岡田ラインに切り替えることの重要性が明記された。
実際に、この年6月、鳩山内閣が崩壊し、菅直人内閣が発足。新しい外交は菅―岡田ラインが担うことになった。
菅政権を引き継いだのが野田内閣。野田内閣は菅氏が提示した消費税率10%の公約を自民党、公明党との協議で法定化した。民主党は主権者との約束を反故にして消費税大増税に突き進んだのだ。このとき、主権者との契約を守り抜くことを実践した国会議員が民主党を離党し、新党を創設した。その新党は「国民の生活が第一」である。
「国民の生活が第一」は当時、与党・民主党、野党・自民党につぐ、総勢50名の国会議員を擁する紛れもない「第三極」勢力だった。ところが、日本のマスメディアは「国民の生活が第一」を一切報道せず、国会議員が10名にも満たない「維新」勢力を連日連夜、「第三極」勢力として大宣伝し続けた。
「維新」が一定の勢力を確保することになったのは、マスメディアによる巨大宣伝に依拠している。その宣伝を広告費に換算すれば天文学的な数値になるだろう。「維新」は、メディア巨大宣伝によって人為的に創設された政治勢力なのだ。
(つづく)
<プロフィール>
植草 一秀 (うえくさ かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、野村総合研究所主席エコノミスト、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)=TRI代表取締役。
金融市場の最前線でエコノミストとして活躍後、金融論・経済政策論および政治経済学の研究に移行。現在は会員制のTRIレポート『金利・為替・株価特報』を発行し、内外政治経済金融市場分析を提示。予測精度の高さで高い評価を得ている。また、政治ブログおよびメルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。関連記事
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